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新・農業経営者ルポ

キロ単価1万円のイチゴはなぜ生まれたのか


武下はFacebookで毎週のように公開対談の様子を流している。テーマは「ピンチの時にどう考え、チャンスに転換するか」。対談相手には行動した具体例を話してもらい、視聴者に元気になってもらうのが第一の目的だ。対談の相手はプロ野球の元監督や現役のキックボクサーなど職種はさまざま。むしろ農業界の人は少ない。その理由は「彼らのネットワークにいる人々に対して自分の存在を知ってもらうため」。結果、SNSの友達が増え、「その1割がうちのホームページに来てくれる」。
さらにLINEの登録者には毎月5000円分の商品が抽選で20人に当たるイベントも設けている。当選者にはクチコミを書いてもらい、その内容は広告に反映させる。武下は「LINEやFacebookなどは入口で、ホームページは出口ですね」と語る。
こうした仕掛けが着実に成果を上げ、自社のECサイトの利用者が多くなっていったのだ。結果、取引相手の割合は企業ではなく個人が増え、取引単価も純利益も上がっていった。

年商1億円を実現後の計画

武下は年内に生産と販売でそれぞれ法人を立ち上げる。狙うのは年商1億円。そのために作付面積を広げるつもりはない。卸売を減らし、小売の割合を増やす。
さらに単価を上げる仕掛けを始めている。注目したのは箱。地元のメーカーに贈答用に三つの特別な箱を製造してもらった。祝い事の場面に応じてそれぞれ使い分けてもらう。原価は従来品よりも5倍以上する箱をあえて用意したのは次のような理由からだ。
「収益商品はイチゴだけ、という考えを捨てた結果です。自社だけで勝とうと思ったら駄目で、箱のメーカー含めてうちのイチゴに関連している人や企業が潤ってもらう仕組みを作りたい」
武下が追究してきたのは「一人ひとりのお客さんに喜ばれる」ことだ。それを追求すれば、大量生産と大量流通には「絶対負けることはない」という強い信念がある。
年商1億円を達成した後に計画しているのは、楽農ファームたけしたをモデルにした農業経営を実践する人材を育てるオンライン講座を運営すること。武下は「農業界に欠けているのは売り方を教える人。作るだけではなく、売るところまでできるハイブリッド型の農家を育てていきたい」と話している。 (敬称略)

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