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特集

種苗法改正 賛成51%、反対24% 本誌アンケートで徹底解剖


以上


知的財産法・ミニ知識 

弁護士 伊原友己

【1「知的財産法」という法律はない】

「知的財産法」という言葉を良く耳にされると思いますが、「知的財産法」という名前の法律があるわけではありません。特許法、著作権法、種苗法など新しく創作された価値あるものなどを保護する法律の総称であって、講学上の概念です。なお、今年、「家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律」が制定され、個別の法律が一つ追加されました。

【2 さまざまな知的財産法を駆使する】

特許法や実用新案法は、新しく創作された技術(発明、考案)について、一定期間、その技術の実施についての独占権を付与して保護する法律です。
意匠法は、新しく創作された産業デザインを保護する法律です。
商標法は、商品やサービスの名称を保護するための法律です。
不正競争防止法は、商品形態や有名ブランドのパクリ行為を規制したり、企業秘密、データを保護する等、幅広い役割を果たす法律です。
著作権法は、美術や芸術分野を中心として文化的な表現を保護しています。
種苗法は、新しく開発された植物新品種の保護の法律といえます。
農林分野の知的財産も上記に限らず、いろいろあって、種々の個別の知的財産法で保護されます。

【3 育成者権と特許権】

育成者権は、新しく開発された植物の「品種」(同様の特性を備える植物体の集合)を無断利用されないための権利です。他方、特許権は、技術的アイディア(物の構造や仕組み、あるいは方法を工夫することにより、これまでにはなかった作用効果が発揮できる技術)を無断で利用されないようにする権利です。植物体の特許については、たとえば“(特許発明である)特定の遺伝子操作で作り出された一定の薬効を有するリンゴ”みたいな感じで特殊なものは特許になる余地はあります。また、特許の場合は、技術的アイディアがしっかり纏まっていれば、実際にその「物」がなくても特許になりますし、また、その権利の範囲も文字で説明されるアイディアの範囲に広がりを持ちます。なお、育成者権は、実際に存在する植物体の特性を審査官が見極めて、一つの品種と位置づけるため、その特性を備えないものは、審査実務上、別の品種と評価されます。従来からある一般の品種を、普通に(遺伝子操作など特殊なことをせず、特殊な栽培方法を採用せずに)栽培している分には、誰かの特許権や育成者権を侵害するといったことには、まずなりませんのでご安心を。

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