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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第21回(番外編つづき) 日本ワインは成長産業か?(下)自社農園産ブドウが増える マンズワイン小諸ワイナリー(長野県小諸市)
- 評論家 叶芳和
- 第41回 2020年09月23日
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4 日本ワインvs国内製造ワイン
ワイン業界は情報公開が少ないのが特徴である。日本ワインの生産量さえも定かではない。様々な点に留意しながら、日本ワインの生産規模を見ておきたい。
表7は国税庁「国内製造ワインの概況」による日本ワインの生産推移である。国産ブドウ100%の日本ワインの生産量は、2018年現在1万6612キロリットル。ほとんど横ばいである。「日本ワインブーム」を言われながら、伸びていない。また、国内製造ワインに占める比率は約20%である。
ただし、本調査はアンケート調査で毎年回答率が異なっており、厳密な時系列比較には適さない点を割り引いて考える必要がある。実態はワイナリーの新規参入が増え、また原料ブドウ価格が上昇していることを考えると、実際には日本ワインの成長率はもっと高いと考えてよい。
表8は、消費者にとってより身近な指標であるが、国内市場における日本ワインの地位である。2018年現在、輸入ワインが66.5%、国内製造ワイン33.5%である。国内製造ワインがわずかに上昇傾向にある。また、日本ワインは4.6%を占める。一方、輸入原料に依存した国内製造ワインは28.9%である。日本ワインの比率が上昇傾向にある(注:本表における、日本ワインが国内製造ワインに占める比率と、表7データとは異なる)。
なお、ワイン流通全体に占める国内製造ワインの比率は前号表1(税務調査であり悉皆調査値)参照。
5 ブドウ品種別ランキング
ブドウの品種数は5000以上と言われるが、産業的には約150品種が重要なようだ。日本で栽培されているワイン用ブドウは、量的には日本固有品種が多いが、近年は世界で好かれて伸びている欧州系品種が増える傾向にある。
表9は、白ワイン用、赤ワイン用別に、使用量の多寡によるランキングを示したものである。白ワイン用では、日本固有品種の「甲州」がトップだ。主に山梨県で栽培されている。次いで、「ナイアガラ」、これは米国系品種で、長野、北海道、岩手が主産地である。近年、欧州系品種のシャルドネやソーヴィニヨン・ブランが増える傾向にある。最近の自社畑拡大では欧州系品種の栽培が多い。
赤ワイン用ブドウ品種では、「マスカット・ベーリーA」が一番多い。これも日本固有品種で、昭和の初め、母は米国系品種、父は欧州系品種を交配して作り出された交雑種である。2位は「コンコード」、これは米国系品種である。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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