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その結果として、その年の気象条件によって現場での管理では緊張が続くものの、乾直の標準的な栽培体系はある程度確立し、品種や新規の農薬・肥料待ちのような状態になった。いまやホイールトラクターで作業可能な水田も次第に増え、パワーハローで床をつくり播種する乾直スタイルも普及しつつある。
同時に、トラクターの操作性が向上して疲れなくなり、播種・肥料ホッパーが大きくなり、自動操舵や無人作業ができるようになり、道具が飛躍的に良くなった。オペレーターは、キャビン付きのトラクターに乗り、おにぎりを頬張りながら、ハンドルから手を放して作業できるのだ。これだけ機械技術が進化すれば、栽培技術もそれに合わせてもっと進化できるはずである。
乾田直播は開発から普及の段階だと言いたくなるところだが、立ち止まっていてはいけない。慣れとは恐ろしいもので、作業がルーチン化されると感覚が鈍くなる。私も家業等に追われて現場を歩く機会が減り、過去の知見をもとに考えるのが危険だと気づいているところである。
今後の発展を願って述べるなら、いつまでも、低コスト化、省力化のための乾田直播だけでいいのだろうかと問いかけてほしい。既に、麦づくりに倣って、乾直圃場でもトラクターで追肥作業をする達人もいる。作業回数が増えても、作業手間が増えても、収量増あるいは品質向上を目指すコメづくりを追求してもいいのではないか。慣行の移植栽培と比べて優れているか、劣っているかで評価する段階から、次のステップに進むときが来ているのだろう。
精度と施肥方法で播種を極めるべし
この視点で触れたいのは、播種についてだ。通常の稲作と乾直で大きく異なる作業である。前回の出芽メカニズムにも関連するところだが、播種精度と施肥のやり方について、要点を整理しよう。
乾直の理想的な播種は、四方均等に種がある状態が良いと考えている。播種深度・条間・株間が揃っていれば、発芽が揃い、その後の成長に希望が繋がる。
では、播種深度はどうしたら揃うのか。まずは、播種床が平らに仕上がっていることである。それは表面だけでなく、耕深も平らであるほうが望ましい。いくら平らに仕上がっていても、土塊が大きいと播種機が跳ねて、正確に作動しない。
播種床の状態と書いたのは、不耕起播種機や条ごとに独立した真空播種機であれば、播種のばらつきを抑えられるが、土塊の大小で播種機の動作状況が変わるためである。現場でも、パワーハローと麦用のドリルシーダーを乾直に使用する試行錯誤の段階では、本当に苦労した。望ましい技術体系に変わりはないが、耕起や播種方法には、まだまだ進歩の余地があるのではと思う。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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