記事閲覧
問題は、その機械を更新する際に、何を選ぶかである。機械の汎用化を進めてきたものの、本当に性能を極めようとするならば、専用化するというのも解だと思う。土塊の大小の影響を最小限にし、播種した時点で正しい位置に種を置く精度でみれば、現状での最有力候補は、海外製の真空播種機(図2)になるだろう。
播種をドリルシーダーによる条播で、施肥をブロードキャスターによる全層施肥で行なうやり方を従来体系とすると、均平作業から播種後の鎮圧までの間に、真空播種機で点播を行なうと1工程減ることになる(図3)。天候の影響で畑に入れる日数が限られたり、面積が拡大したりすれば、メリットになる。良く言えば、丁寧に平らな播種床をつくらなくても播けるのだが、作業機の機構上、パワーハローなどの土耕機とのコンビ作業はできない。
では、少し時間が経過しているが、乾直での真空播種機の可能性を探るために行なった試験をもとに、真空播種機の評価を現場目線で説明しよう。この試験では、ドリルシーダーと、真空播種機(畝間26cm)では株間9.5cmと13cmで播種後の生育状況を収穫まで追いかけた。
倒伏に強く、根がらみ・株立ちをさせるために目指したのは、6粒点播である。根がらみとは根がはびこること、株立ちとは一本の茎の根元から複数の茎が分かれて立ち上がっている様子をそれぞれ指す。播種床に側条肥料を埋設したのは、根が肥料分を得ながら、地下に旺盛に伸長していくことが望まれるからだ。このときは種子と土壌に影響のない肥料を選定した。
試験結果を表1、表2に示す。稚苗による無代かき栽培と同様の初期生育、苗立ち本数150本/平方m、収量600kg/10aを目標に掲げたが、B農場の一例を除いてクリアした。試験の調査収量の値を鵜呑みにはできないが、600kg/10aを超えている時点で、試験に用いたドリルシーダーも真空播種機も見込みがないわけではない。さらに、2カ年ともに播種量を減らしても苗立ちを十分確保できているので、真空播種機の播種精度が高いことがわかる。
次に、苗立ちの様子を図4に示した。見た目はあまり差がないように感じられた。もう少し成長した様子と収穫期の様子は図5を見ていただきたい。株立ちの様子はドリルシーダーで播種した試験区より右側の点播した乾直のほうが力強かった。収穫期においては、遠目では差が見られなかった。ちなみに、3枚並んだ圃場に試験区を設けたので、土壌条件は影響していない。
会員の方はここからログイン
齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
ランキング
WHAT'S NEW
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
