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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ポーランド 90 年の歴史を有する天然繊維・薬用植物研究所

ポーランドは、国土面積が日本の約8割で、人口3817万人、国土のほとんどが緩やかな丘陵地帯で占められ、EU加盟国のなかでは農地面積が第3位と比較的農業が盛んな国である。主要農産物は、てん菜、小麦、ジャガイモ、リンゴ、生乳等で、5ha未満の小規模農家が5割を占めるものの、旧国有農場をベースにした大規模農家もいるため、産業構造としては多様である。
この地にスラブ人が定住した頃から始まったとされるヘンプの栽培は、1950年以前は5万haに達する規模だった。ヘンプはポーランド語で「Konopie(コノピー)」と呼ばれ、縄や糸の原料として親しまれてきた。緑豊かな麻畑は年配のポーランド人にとって、子どもの頃に3m以上のそびえ立つ麻の間で、かくれんぼをした思い出の場所でもある。

雌雄同株品種の育成に大きく貢献

ヘンプの栽培面積は、60年代に3万haあったが、外国産のマニラ麻やジュート麻、化学繊維の普及に伴い、徐々に減っていった。その一方で、第二次世界大戦後に次々と禁止したほかのEU諸国と異なり、同国は社会主義陣営だったため、米国の大麻禁止政策の影響を受けずに合法のまま、ヘンプ栽培も研究も継続してきた。
中世ポーランド王国の最初の首都ポズナンには、世界的にも長い歴史と研究実績を有する天然繊維・薬用植物研究所がある。設立は1930年。おもに亜麻繊維の研究拠点だが、ヘンプ繊維についても育種や栽培、収穫作業の機械化、繊維の抽出、紡績、繊維板製造等の研究を進めてきた。
なかでも58年から国策で始まった総合育種計画は、ヘンプの新品種の育成に影響を与えた。育種目標は、(1)茎における繊維の割合を増やすこと、(2)繊維の品質(細さと均一性)を上げること、(3)カンナビノイド含有量を減らすことだった。この3つの目標には互換性がなく、達成までに長い時間と労力を有した。
ヘンプは通常、雄株と雌株が50対50の割合で出現する。繊維の品質で見れば、雄株の茎からは細い繊維が、雌株の茎からは粗い繊維が採れる。雄株が早く生長して開花し、雌株が花粉を受けて種子を成熟させる。繊維の品質を均一化し、収穫作業を機械化するためには、繊維と種子を同時に採取できることが求められた。そこで、43年に開発された雄雌比率ごとに5つに分類するゼンブッシュ分類方式(図1)を利用して、雌雄同株の育種に力が注がれた。
その成果は67年に登録された「Bia■obrzeskie(ビャウォブジェスキー)」(■=Lにストロークを付した文字で、ポーランド語第16字母)と85年に登録された「Beniko」という雌雄同株の2品種で、04年にEU加盟国になるまでの間、国産指定品種として栽培現場に寄与した(表1)。

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