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【専門家インタビュー】
農福連携の本質を見失わず、ブームで終わらせないために/京丸園(株) 鈴木厚志・緑
- 紀平真理子
- 2020年10月23日
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1996年より障害者自立支援センターと連携し、雇用および研修生の受け入れを開始。
2004年に屋号を継承し、京丸園株式会社を設立。圃場面積約130aで、水耕栽培による姫ねぎ、姫みつば、姫ちんげんを栽培する他、水稲100a 、野菜類 50a も。2019年、第48回日本農業賞大賞、第58回農林水産祭天皇杯を受賞。
代表取締役、NPO法人しずおか
ユニバーサル園芸ネットワーク事務局長
鈴木 厚志
総務取締役、栄養士、初級園芸福祉士
鈴木 緑
課題の表面化・検証のフェーズへ
―筆者が初めて訪問した障害者雇用をしている生産者は、京丸園さんでした。当時、お話しいただいた内容に違和感はありませんでした。でも、その後農福連携に取り組んでいる農業経営体を見るなかで、障害を持つ人を「安い労働力」として考えている人もいるように感じ、その他にも色々と引っかかる点があったので、今日は思いを聞きにきました。
鈴木厚志氏(以下:厚志、敬称略)
見る角度によって違和感を覚えるのが今の農福連携。福祉の立場から見ても、違和感があるんじゃないかな。国が農福連携に力を入れたことが起爆剤になっていることは確か。動きがあるのはいいことだけど、どこかで誰かが収拾しないといけない時期じゃないかな、というのが今の心配事項です。
何でもそうだけど、取り組んでみて問題が出た時に、整理する人が出てこないと乱雑になっちゃって、「なんだったのかね」で終わる。農福連携にも色々な形があってもいいとは思うけど、「障害者と組んで何がしたいのか」という点が明確にならないまま農福を進めてはダメです。「農福」って言葉が広すぎる、農業は大事だよね、福祉も大事だよね、その二つが結びついただけでオッケーが出ちゃう。
鈴木緑氏(以下:緑、敬称略) 農福のイメージが良すぎちゃう。みんなの中で、農福が持続的やスローライフなどいろんなイメージに転換できちゃうじゃない。それが惑わせる。
厚志 農業側も福祉側も、何か目的があって組んでるはず。お互いがそれを表明していないのは、あまりいい連携とは言えないんじゃないかな。国の事業になっていて、助成金があることは、農福連携に取り組むきっかけとしては悪くないけど、それを目的にしちゃうと本来自分は何をしたかったか分からなくなっちゃう。
例えば、労働力が足りないという経営課題があるならば、それを表明しないといけない。なんとなく障害を持った人たちが来てくれて「助かった」で終わっちゃったり、そもそも労働力が足りなくて、お金を払う気があったのに、「安い労働力で助かった」にしちゃったりすると、ややこしい話になる。「障害を持つ人たちが来ていなかったら、どうしてたんですか?」と問うことが必要で、同時に「彼らがいなくなったらどうするの?」という経営課題も残されたまま。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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