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特集

農業に規制改革を! 前編 72%が弊害ありと感じた現行の規制と縦割り行政

新内閣の発足に伴い、本誌が長年、取り組んできた農業の規制に関する問題が注目を浴びている。企画を進めるにあたってアンケート調査を行なったところ、200人を超える回答者のじつに72%が農業分野の規制や縦割り行政などで弊害を感じると答えた。今号と次号の2回にわたって改革すべき規制を共有し、実際に改革を促すうねりを作りたい。
調査期間:10月12~26日
調査主体:(株)農業技術通信社
調査目的:
農家を含む農業関係者が農業分野の規制改革について
どのような考えや意識を持っているのかを明らかにする。
調査方法:本誌、農業ビジネスの読者にウェブアンケートを送付
回答数:203件

対 談 積み残されている規制改革と問われるべき中心課題

本間 正義(西南学院大学教授・前内閣府規制改革推進会議専門委員)×昆 吉則
(本誌編集長)
文/清水 泰

【経済的規制が健全な市場の競争を阻む】

昆 本間先生は内閣府規制改革推進会議の農業ワーキング・グループの専門委員を今年8月まで務めました。本日はこれまでの規制改革の議論と積み残した問題等について聞ければと思います。
それではまず、規制改革が叫ばれるなか、確かに規制撤廃・緩和は大事ですが、必要な規制もあると思います。そもそも「規制」とは何か、規制の問題点について教えてください。
本間 規制の問題はまず、「社会的規制」と「経済的規制」の二つに分けて考えてください。社会的規制とは例えば、毒物や安全にかかわる規制、薬物や暴力といった警察が取り締まるべき規制のことで、これをなくすと私たちの日常を危うくするものなので、きちんと維持していかないといけない必要な規制です。
我々が問題にしているのはもう一つの経済的規制です。経済的規制とは、供給が限られたものを限られた人しか行使できないように、参入したり利用したりする権利を権力が特別な人だけに分け与えることでできた規制です。
昆 ヨーロッパには古くから職業規制がありますね。
本間 職業規制として知られるヨーロッパのギルドは、徒弟制度の下で、特定の職人にしか、あるものの製造が認められませんでした。例えば、馬車職人は馬車本体しか作れず、馬車の車輪は別のギルドの職人が作ったものを買わないといけない。そうやって規制することで車輪を作るギルドが保護されます。すると、車輪業界は新規参入がないために進歩が生まれず、健全な競争を阻むものとして経済的規制が機能するのです。こうした供給が限られるものが特定の人に権利として与えられ、そこで得られる過剰な利益等の利権が「レント」と呼ばれます。
経済的規制で活動が制限された産業では、規制にまつわるレントを探し求めるレントシーキングがはびこり、レントを欲しがって政権におもねる人がはびこります。昔なら賄賂を使い、今は政治献金や選挙活動に協力する見返りとして、特定の人に与えられる権利を手に入れようとするのです。こうしたレントシーキングが産業界にはびこると、経済合理性を追求したり、商品技術開発や生産方式の進歩を追い求めたりするよりも、権力に媚びへつらうほうが楽に儲かってしまう構造ができ上がるため、経済が発展しなくなるのです。

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