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貿易がまさにそうで、昔は権力によって貿易のできる商人が決められていたので、貿易商人は利益を独占できました。そのため、貿易できる権利を分け与えてもらうよう権力におもねる。経済的規制の出発点ですね。また、フランスの話だったと思いますが、洋服のボタンを作るギルドは、ギルドに入っていない業者が新型の使いやすいボタンを開発すると、権力に販売禁止の法律を作り、その業者を取り締まるよう求めたといいます。既得権益(利権)の保護が優先され、産業の発展を妨げた事例の一つですね。
昆 かつてあった牛肉の数量規制もそうですね。
本間 海外の安い牛肉を買い付けてそれを国内市場で高い価格で販売する。その差額がレントで、業者はさらなるレントの増大を求め、輸入割り当ての増量を表では政治献金、裏では賄賂を使いながら政府に要求するようになりました。消費者不在のまったくムダな経済活動です。
経済的規制の問題点を整理すると、(1)供給が一定のものを権力者が特定の人たちに分け与えることで“利権(レント)”が発生する。そうするとその産業・業界に(2)技術開発もイノベーションも経営努力も必要としない経済構造が生まれ、経済が進歩・発展しなくなる。これが最大の問題点です。
【規制改革と弱者救済は両立できる】
昆 長年存在した規制がなくなると、これまで何とか従事してきた農家たちが撤退せざるを得ない現実があり、経済合理性の問題だった規制が一気に政治問題化してしまいます。どこまで規制改革は進めるべきなのでしょうか。
本間 昆さんの心配も理解できますが、その言い分こそ経済的規制を社会的規制にすり替える議論です。規制改革を進めたせいで、あたかも農村が疲弊するとか、弱者の農家が退出させられるという言い方をし、本当は経済合理性で判断される経済的規制の問題のはずなのに、社会的規制として残さないといけない、そう錯覚させることで議論をすり替えているだけなのです。
弱者の農家を救い、彼らの生活を守るために今の規制を残すべき、という問題の立て方が間違っているのです。経済的規制の緩和や撤廃の問題は、経済合理性や産業力の強化という視点で判断する。一方で、その影響を受ける弱者の保護については、いろいろある有効な手立てを講じる。ですから、規制改革を進めることと弱者保護や激変緩和措置は両立するものですし、両立させないといけません。
昆 弱者保護を理由に何も改革しないというのは一番質が悪い政策論争なんですね。
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