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特集

農業に規制改革を! 前編 72%が弊害ありと感じた現行の規制と縦割り行政


しかし元来、大麻取締法は大麻の栽培と所持を禁止する法律で、薬物としての大麻の使用を禁止するものではない。すなわち、大麻(大麻草の葉と花、およびこれらの加工品)の所持が違法で、吸飲自体は違反ではないという一般にはわかりにくい法律である。
また、大麻取締法はマリファナ成分のTHCの有無に関わらず、全ての大麻草の栽培と所持を原則禁止としている。
しかし、この論理で考えるならば、毒キノコが危険だからと、キノコを全て禁止とするだろうか。1日も早く、国際的に通用するTHC含有量による規制を取り込んだ法改正を求めたい(表3)。
なお、この法律が制定された1948年当時は、2万戸を超える農家が約4000haの麻畑で生計を立てていたので、栽培は知事認可の免許制であったが、実際は届出制に近かったという。したがって、大麻取締法は本来、麻農家を保護する法律でもあったが、現在はもっぱら薬物取締りに適用され、農水省は大麻から撤退してしまった。農水省には、新たな農作物としてヘンプの研究をぜひ再開してほしい。

【“新たな目的”では認可しない法運用】

大麻を栽培するには知事発行の免許が必要になるが、新規の免許申請はまず認可されないという。この原因も大麻取締法とその運用にある。
すなわち、厚労省は大麻の栽培目的を「作物として出荷したり、伝統的な祭事に利用したり、栽培技術を代々継承したりするなどの何らかの社会的な有用性が認められるもの」、あるいは「その栽培目的が伝統文化の継承や一般に使用されている生活必需品として生活に密着した必要不可欠な場合」に限定している。
「種子や繊維を農作物として出荷」と農作物としての通常の栽培目的を認めているにも関わらず、実際には「伝統文化の継承や生活に密着した必需品として必要不可欠な場合」のみが正当な目的とされ、新たな栽培目的では認可しないよう各県を指導している。
厚労省にすれば、大麻の乱用による保健衛生上の危害を防止する観点から、栽培を可能な限り禁止するのは当然であり、新たなヘンプ産業の振興などは所管外ということだろうか。諸外国のように、新産業の育成という観点からの法改正と運用が強く求められる。

【作付面積は栃木中心に全国11ha、北海道内はゼロ】

厚労省によれば2018年現在、栃木県を中心に栽培免許者は全国で35人、作付総面積は11.2haである。北海道では、北見市の(有)香遊生活が2005年に栽培免許を取得し、翌2006年から「おがら(麻がら)」などの生産を目的として、7.3aの圃場で栽培を開始した。長年、ヘンプの普及に尽力された同社の舟山秀太郎社長が昨年お亡くなりになり、2018年をもって道内の栽培面積はゼロになった。

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