ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

農業に規制改革を! 前編 72%が弊害ありと感じた現行の規制と縦割り行政


本間 規制を残せというのは単に今までのやり方を続けたいということ。変化がないほうが居心地がいいんです。よく言われることがあって、私が既得権益や日本の農業が保護されているという話をすると、「オレたち、こんなに貧乏で儲かってないのに、何が日本農業は保護されているだ!」と食ってかかられます。でも、もし関税がなければ、手厚い保護政策がなければ、そういう農家たちはとっくに別の職業に就いて身を立てていなければならなかったかもしれない。貧農であれ何であれ、農業を続けられていること自体、保護されてきた結果なんですよ。その意識を持たないと、日本農業における経済的規制の本質は見えてこないと思います。
昆 本間先生は農業を敵視しているわけでもなければ、弱者の農家が貧農のままでいいとも考えていないわけですね。むしろ、農業が大好きで、心から日本農業を良くしたいと思っている。
本間 日本農業を良くするためには“いい方向に変化”しなければいけません。それで犠牲が出るならば、その犠牲を和らげるさまざまな手立てがあるはずです。それをちゃんと考えましょうということです。いい方向に変化していかないと、ギルドの例ではないですが、車輪のギルドの職人は一生車輪だけを作って人生が終わってしまうし、新型の便利なボタンが開発されて今よりもいい生活ができる機会も奪われてしまうわけです。変化というのは当事者の生活はもちろん、社会みんなの生活が良くなる方法を考えましょうねということなんです。今は農家や農業に変化をさせないせいで、他の多くの人や私たちの日常生活に大きな損失が生じている状態です。
昆 私は「貧農史観」という言葉をよく使います。規制が撤廃されると農業が滅びるとかいってうごめく人たちがおり、本誌読者のような農業者も例外ではありません。規制改革の影響を和らげる対策をするとなると、そこに新たな利権が生まれ、レントシーキングが始まる。貿易自由化対策など過去にそういうことが結構あり、結果的に必要以上の補助金をもらうケースが少なくないんです。激変緩和措置の基準を小規模農家に合わせると、大規模農家は多額の補助金を受け取ることになります。一旦受け取ってしまうとその利権を手放したくなくなり、それまでの規制改革派から抵抗勢力に立場を変えたりします。
本間 それは弱者を救うための措置が別の人の利権を生むケースで、規制反対派が規制の抵抗勢力になって反対することも実はよくあるケースなんです。だから、規制改革とセットの激変緩和措置は、それを念頭に置いて制度設計をしないといけません。

関連記事

powered by weblio