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特集

農業に規制改革を! 前編 72%が弊害ありと感じた現行の規制と縦割り行政


本間 その通りです。政府が経済活動をある方向に誘導する方法は二つしかなく、法律による規制と補助金による誘導です。農地法は法律で縛る規制ですが、農水省所管の規制のほとんどは補助金を配って法律による規制と同じ誘導をしています。減反政策は経済合理性と市場の需給を無視して主食米の供給を減らし、価格を釣り上げる政策で、食管法時代から現在まで一貫した政策です。もっとも、恩恵を受けているのは乏しい生産資源でも生産と一定収入が保障される小規模農家です。
昆 食管法は超過需要下のモノ不足でこそ機能する法律ですから、その歴史的使命はとっくに終わっています。飽食で需要創出の今は、農業とその規制も新しい段階に進む必要があります。
本間 封建制の復活を阻止するための農地法も不要ですし、経営体力の乏しい小規模酪農家を束ねる目的の生乳の指定団体制度ももはや不要です。だからこそ“いい方向に変化”させる規制改革が必要なんです。
農家が仕事の安定をめざすのは当然ですが、自分の売っているものがどこにどうつながっていて、どのように社会に貢献しているのかをマーケットインの発想で見れば、そうした規制が不要なのは明らかです。しかし、多くの農家には相変わらずプロダクトアウトの発想が抜けずに、「オレたちが苦労して作ったものは高価格で売れて当たり前」だという意識が残っています。
昆 そうですね。
本間 私は「農産物は投票だ」とよく言います。「ウチでこんなコメができました。さあ、消費者のみなさん何票入れますか? 2万円、3万円、それとも5000円ですか」で決まるのが市場システムなんです。理解している人とそうでない人の差は大きいです。
昆 食管法時代の後遺症は日本農業の弱点として残っています。食管法のなかった海外では穀物のマーケットに合う民間育種が盛んですが、日本は米麦に限らず、馬鈴薯まで官が支配していたため、100年以上前の品種がいまだにマーケットの中心です。民間育種が盛んな野菜では世界的な品種が開発されているのに、旧食管法の作物は遅れています。食管法や食管法イデオロギーから派生した各種制度が温存され、日本農業発展の足かせになっています。
本間 コメも同じです。マーケットが縮小するなかで、各地方が税金を投じて一般用主食米の商品開発競争に明け暮れ、結果的に疲弊しています。マーケットが求めているのは例えば、業務用の安価な多収米なのに、針の穴を通すようなニッチな商品開発をして産地間競争に陥っている。もっとマーケットをよく見て、マーケットのニーズを満たす民間主導の品種開発に注力すべきでしょう。政府はマーケットと対立するので、政府主導の品種開発ではマーケットの期待には応えられません。

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