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特集

農業に規制改革を! 前編 72%が弊害ありと感じた現行の規制と縦割り行政


昆 多収米の開発は品種の段階では農水省も含めて結構行なわれています。ただ、減反政策を進める手前、主食米としては普及させられないので、飼料米として普及させようとしています。食管法イデオロギーが払拭されていれば、もっと自由な動きができるのにと残念に思います。
本間 高いけどおいしいコメというのは農地法とも関連しています。大規模化できない兼業の小規模農家を保護しようとすると、どうしても高価格戦略になってしまう。多収低コストの「みつひかり」などを大規模農地で作るような展開になっていけば、状況も少しは変わってくるのでしょうが、農地は総量が決まっているので、誰かが退出しないと規模拡大できません。生産資源を自力で拡大できる他産業ではありえない制約です。
昆 食管法のコメ、農地法の水田という二つは、農家以外の関連団体・制度である農協、農業委員会、政治家、行政、共済制度といったすべての利権構造に絡んできます。現実の農家は1960年代以前からどんどん兼業化しており、家電を買うように農業機械を買い、農業生産のやり方や生活を変化させてきました。にもかかわらず、既得権益を握っている農業関係者たちがいるために規制改革が進まず、時代の変化に取り残された面もあると思います。

【農地法改正や一度破れた指定団体制度で改革を実現】

昆 本間先生は1995年から25年間にわたって政府の規制改革関連の任に当たってきました。この間の成果でいい方向への変化とは何ですか。
本間 一番大きな成果は、2009年の農地法改正で所有と利用の分離が認められ、株式会社が農地の賃貸借で農業生産への新規参入が可能になったことですね。これは第一次安倍政権下の経済財政諮問会議が先導して議論を進め、農水省もその議論に合わせてきて実現した農業規制改革の大きな進歩でした。
もう一つ大きな進歩だったのは、2017年にようやく実現した生乳の指定団体制度改革です。指定団体制度は、1996年に私が初めて行政改革委員会規制緩和小委員会の委員になって真っ先に取り上げた規制でした。酪農家が自由に集まって自分たちで組合を作り、それを指定団体にして補助金をもらう仕組みを提案したのですが、当時は都道府県に一つずつあった指定団体を全国10に再編する真逆の動きが進んでいたため、断念するしかありませんでした。
それが20数年を経て、頻発するバター不足など状況変化の後押しもあり、指定団体でなくても加工原料乳の補給金をもらえる仕組みに変えられました。その結果、指定団体を介さない生乳の供給が増えてきたりと大きな変化が起きています。

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