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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第22回 研究者の“脱サラ”ワイナリー 自己実現めざす働き方改革 ビーズニーズヴィンヤーズ(茨城県つくば市)
- 評論家 叶芳和
- 第42回 2020年11月27日
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[1]ノーベル賞の町――新しいワイン産地化に向けた動き活発
筑波山麓がブドウ・ワイン造りに沸いている。“脱サラ”の新規参入である。三つのワイン会社のうち(それぞれ12年、14年、15年創業)、二つは研究者の脱サラ組で、博士号の取得者だ。ワイン造りは自己表現できるクリエイティブな仕事であり、また「ワインは人を呼ぶ」という特性があり人との交流をつくり出す楽しい産業であることも、脱サラの対象なのであろう。全国各地で、医者や大学教授がワイナリー経営に新規参入しているが、ここ研究学園都市・つくば市でもその動きが出ている。時代の変化を感じる。
筆者は長年、農業は広汎な科学の上に成り立っており、頭脳労働が決定的に重要な「先進国型産業」であり、頭脳労働ができる人が農業に就けば成功できると主張してきたが、日本ワインブームは思わぬ現象を生み出したといえよう。40年前、ニュージーランドやアメリカの例を引きながら「農民は最高の職業である」と書いたことが思い出される(労働省職安局『職業安定広報』1980年6月21日号巻頭言、拙稿)。
つくばエキスプレスの終点「つくば駅」の近くに、小さな公園がある(中央公園)。筑波大学ゆかりのノーベル賞受賞の科学者たちが並んでいる。江崎玲於奈博士、朝永振一郎博士、小林誠博士のモニュメントだ。入口近くに江崎博士、そして朝永博士、小林博士と続く道は「未来への道」と名付けられている。その道を踏みしめながら歩くと、身が引き締まる思いがする。子供連れの母親たちにとっては最高の教育の場ではないだろうか。筆者は「来るのが遅かった」という思いが込み上げてきた(もう遅いのである)。そのくらい、感動の場所である。
公園の端に、動物の像が見えた。もしや「ガマ蛙」と思って近づくと、「フクロウ」の像であった。フクロウは古代ギリシャ以来、「森の哲学者」「学問の神様」「農業の神」と言われている。「ガマの油売り」からノーベル賞の町へ、筑波は変わったのだ。
筑波研究学園都市は、非日本的なものを感じさせる。東大通りのトウカエデ樹の並木も日本離れしているが、もっと中身だ。国の研究・教育機関のほか、民間研究所等の集積も厚く、研究者が多いのが一番の特徴だ。研究者数は日本人研究者1万3481人、外国人研究者7277人もいる。合計2万758人(16年現在。表1参照)。人口23万人に対し、研究者が2万人以上。しかも、外国人研究者が多い。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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