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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第22回 研究者の“脱サラ”ワイナリー 自己実現めざす働き方改革 ビーズニーズヴィンヤーズ(茨城県つくば市)
- 評論家 叶芳和
- 第42回 2020年11月27日
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日々どういう気持ちで仕事をされているか、研究者時代との比較をお尋ねした。
「現役時代は多くの学生指導や共同研究・外国からの受託研究などを実施してきました。狭い専門的知識を有する大学や研究機関の人間との付き合いになりますので、ある意味では多様性の少ない人間関係とでもいえるものでした。
しかし、農業に突入してみると、もちろん年齢層も広く、かつワインというキーワードで種々な人間と接することが可能となります。いわゆる社会性が上がったような気分を感じています。裾野が広がる分、人に接するときのワクワク感も大きくなります。はっきり言って、今の方が楽しいです。新しいことばかりですので、余計そう感じるのかも知れません」
高橋さんは、人との交わりが楽しいと強調する。「ワインは人を呼ぶ」という特性があるが、高橋さんはまさに多様な人たちと交流できて、日々、満たされた気持ちで過ごされているようだ(週3日研究所、残り4日好きなワイン農業は最高の暮らしと思われる)。
数多くの友人・知人や家族と楽しみながら、良いブドウと良いワインを造ることに向けて余生を投じるという。90歳までは現役として、畑やワイナリーに立ち続けたいという。
つくばは、農業を楽しみの大きい職業として捉え、科学的なデータをもとに農業を営む人の新規参入が増えている。さらに、高橋さんや今村さんに先導されて、最近、ブドウ栽培を始めた人が3人いる(ワインを造っている3社のほかに)。この2年で、すでに倍増した。
[4]経営概況――「人」に着目したとき長野よりも有利
今村さんが就農したのは5年前である。ブドウを収穫しワインを出荷しているが、まだ醸造施設はなく委託している。英語表記の会社名「Bee's Knees Vineyards」は、直訳すれば「エクセレントな葡萄園」であるが(命名の由来はわからないが)、働き蜂のように頑張って、小さくても最高のワインの花を咲かそう!ということであろうか。
現在、経営面積は1.5ha(沼田0.8ha、臼井0.7ha)、ブドウ収穫量2.5tである。ワイン生産量は19年は2500本であったが、今年は2000本に減らし、500本分は東京都内のワイナリーにブドウで販売した(注:ブドウ価格の相場はキロ400円であるが、今村さんは500円で売れた)。成園になると、1.5haで8t収穫できる。高品質ブドウを取るため、10a当たり500kg程度を目標にしている。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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