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立科の風土で栽培されたリンゴは糖度が高い。この糖度がシードルをつくるとき力を発揮するという。立科産リンゴは完熟すると20度ほどに達する。糖度の約半分がアルコール度数になるので、たてしなップルのシードルは一般的なシードルよりアルコール度数が高い9%になる。また、フランス伝統のビン内発酵方式を採用することにより、酸や酸化防止剤など加えず完熟したリンゴだけを原料にしている。こうして立科の地味のあるシードルができるのだという。立科産ならではのリンゴを活かした「たてしなップルシードル」は、2007年に長野県原産地呼称管理制度の認定を受け、以来毎年認定されている。
地域の人々の支援を受けてきた加工事業
建設会社を営む小宮山氏が、なぜリンゴの加工事業を展開してきたのだろうか。
小宮山氏は1974年、兄と共に建設会社を創業した。農業一筋で地域のために働く父を見て育った小宮山兄弟は6年後、親戚が栽培をやめたリンゴ畑を荒廃させてはいけないと、その畑を引き継いだ。これがリンゴ栽培を始めたきっかけだ。以来37年間、建設業と農業の二束のわらじを履くことになる。
栽培を始めたものの、生食用として出荷するだけでは採算が取れない。そこで採れたリンゴを原料にジュースをつくり始めたのが加工事業の起点だ。営業能力がある社員が入社したことにより、03年に「たてしなップル」というブランドを立ち上げたころから事業が大きく動き出した。翌04年にはたてしなップルを法人化し、本格的に果実加工事業を始めた。同年、アンテナショップをオープンし、ジュースやアップルパイなどの加工品の情報発信に力を入れ始めた。シードルづくりに乗り出したのもこの年である。17年にはワイン醸造家井上雅夫氏を工場長に迎え、自社ワイナリー「たてしなップルワイナリー」を立ち上げた。
たてしなップルには多くの人々が関わっている。法人化に当たっては地元の知人たちが出資をしてくれた。シードルづくりでは同じ東信にある古屋酒造店が醸造を引き受けてくれ、自社ワイナリー立ち上げにも協力してくれた。安江高亮氏の誘いでNPO法人東信まちづくり研究会に参加しはじめたころから地域の人々からも応援されるようになった。ワイナリー立ち上げに際しては、たてしなップルの立科産リンゴの名を広める活動に賛同する多くの人たちが協賛金を提供してくれた。
「いろんな方から手を差し伸べていただいて、応援してくださる方に支えられて、いまに至っていると実感している。土地の貸し借りも含めて地域に応援されないと成り立たない。地域と共にある仕事だと思う」
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