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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
ラトビア 種子収量の多い独自品種を開発し、栽培の自由化が拡大を後押し
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第36回 2020年11月27日
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さらに、10年にはラトビア産業用ヘンプ協会(LIKA)を立ち上げ(図1)、会長に就任し、活動の幅を広げている。同協会の設立目的は、(1)栽培者、加工業者および専門家を結び付けて、天然繊維およびその他の再生可能な原料の栽培を促進すること、(2)関心のある協力パートナーと企業の協力を発展させること、(3)ラトビアの地域における農業と工業の発展を促進することである。ヘンプに関心を持ってもらうために『産業用ヘンプの栽培者と加工業者のための推奨事項』と題した全52ページの実用的なガイドを発行している。
一方で大学にも研究を呼びかけ、11年からはラトビア農業大学とリガ工科大学でヘンプ栽培と繊維の使用に関する研究がスタートした。栽培試験は欧州でよく栽培されている10品種で行なわれ、収量は48~75t/ha、乾燥バイオマス量の平均は18t/haを記録した。
また、育種分野では、ラトビア独自のヘンプ品種「アドゼルビシェ」が17年に登録され、欧州農業植物品種カタログにも収載された。この品種は、世界的に人気のあるフィンランド産の種子採種用の「フィノーラ」より種子収量が多いことが特徴である。この品種の種子は、協会から栽培者に1kg当り6ユーロ(約720円)で販売されている。
こうした研究成果を発表する場として、毎年1回、国内外のヘンプ専門家を招いて、法制度、栽培、加工、食品・建築・複合素材への展開といったテーマを網羅するセミナーを実施し、情報交換と人材交流の場をつくっている。
ヘンプ情報を発信する オベリスク農場
最近、ヘンプの無限の可能性への魅力を伝え、誤解を受けている側面を改善する活動を始めた農場がある。オベリスク農場は、有機農業をするために、17年にイギリスのロンドンから4人家族がラトビア東部のオベリスク村に移住し、2.5haでの栽培からスタートした。有機農業の中心的な作物としてヘンプを栽培し、食品や紙製品を販売している(図1)。
さらに、農場を核に、ヘンプの歴史教育の場としてヘンプ博物館と、産業用ヘンプの最新の知識を提供するヘンプ・スクールを開設した。ヘンプ繊維を手作業で採取し加工する昔ながら作業の再現、紙漉き、お菓子づくりやヘンプ料理の体験、ヘンプの茎を利用した建築材づくりなどのワークショップを開催し、農場研修生の受け入れなど、産業用ヘンプの価値を広めるさまざまな企画を展開してきた。現地のテレビ番組の料理ショーにヘンプ料理で出演したり、それをきっかけにヘンプ料理本を発売したりといった目覚ましい活躍により同農場は、ラトビア農業省による「ラトビア最優秀家族農場賞2019」を受賞した。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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