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【土門「辛」聞】
減反2割アップ・予算据え置きで減反政策は空中分解する
- 土門剛
- 第195回 2020年11月27日
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米価高騰を呼び込んだ飼料用米の高額助成
直前に公表された作況指数(9月15日現在)は、全国101。主産地は軒並み豊作モードだった。適正生産量の削減があることは、ある程度予想されていたが、700万tの大台を一気に割り込む数字に、神明ホールディングス社長の藤尾益雄委員は、「衝撃的。達成できる数字なのか」(10月17日付け日本農業新聞)と驚いた。
転作奨励金、いまは水田活用の直接支払交付金のことである。9月30日公表の21年度概算要求では、20年度当初予算と同額の3050億円だった。過去最大の減反幅を反映したものではなかった。
予算と交付単価が同じであれば、転作奨励金が薄まることになる。そうなれば減反協力者が減り、主食用米の生産にドライブがかかる。空中分解と表現したのは、このことを指すのだ。
どれぐらい薄まるか。20年産の減反面積は50万haだった。10万ha上積みなら20%の増加となる。これに対応する減反奨励金はざっくり500億円。水田利活用予算3050億円を減反面積で割った数字の8割とした。いまの財政状況では、おいそれと出せる金額ではない。さりとて都道府県にまるまる肩代わりさせることができるわけでもない。
この非常事態に、JA全中の馬場俊彦専務は、「過去にない数字だ」「非主食用米などへの転換に向けた材料を早急に示していかないと、(確保した)時間が無駄になりかねない」(10月17日付け日本農業新聞)
このタイミングでの食糧部会は、通例11月後半に開かれる。それがことしは1カ月前倒しで開いた。農水省が「(確保した時間が)無駄になりかねない」よう農協組織に配慮したのだ。
水田利活用事業は財務省には評判がよくなかった。とくに目の敵にしてきたのが飼料用米への高額助成。米価を高値誘導してきた諸悪の根源とまで言い切っていた。財務省の言い分は、18年4月の財政審議会・財政制度分科会で述べた前田努主計官(当時)の説明に尽きる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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