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繰り返すが、飼料用米など新規需要米に取り組むのは、基本的には売り先のない農家である。税金で助けてもらうわけだから、補助してもらった結果は、(1)のケースで示した所得344万円を下回る交付単価にしておくことが、あるべき制度設計ではないかと思う。
先にペナルティという表現を使った。その意味は、「需要に応じた生産ができなかった」ということで、主食用米を作付けした場合の344万円より5%ぐらい落ちる額になるような交付単価にしておくことが通常の世間感覚だ。金額べースなら18万円程度低い額だ。
先に表2で示した10a当たり交付額(交付単価)をご覧いただきたい。農水省の制度設計は、わざわざ逆シャンパンタワーになるような交付単価にしてきた。農水省自ら高値米価を煽ってきたと批判されても仕方がない。
予算を膨張させた名物穀物課長
2017年当時、農水省幹部に、飼料用米の交付単価の見直し時期を質問したことがあった。その幹部、しばし呼吸をおいて「東京五輪後かな」と答えておられたのをいまも鮮明に覚えている。
すでにそのころには水田活用交付金の単価のあり方について財務省が批判を強めていた。極めつけは、広報誌「ファイナンス」17年5月号で岩元達弘主計官が暴露した、この事例だ。
「飼料用米等への転作が増加していますが、水田機能を有しない農地への交付を廃止するなどの見直しを行い、要求額から縮減しています」
10a当たり交付単価が10万円の大台になったので、畑地化して水田機能を失った荒れた農地にも飼料用米などを作付けする農家が出てきたということだ。補助金依存行政が招くモラルハザードの象徴例のようなものだ。
財務省に批判の隙を与えたのは、15年1月から17年7月まで穀物課長の座にあり、交付単価をつり上げた川合豊彦氏(技術会議研究総務官)だ。在任中、水田利活用事業の予算を初の3000億円台に乗せた“豪腕”の持ち主でもある。
その豪腕ぶりは、17年3月、日本飼料用米振興協会主催のシンポジウムで言い放った「水田フル活用はブレずに実施する。先日の国会で大臣も力強く『平成30年産以降も安定的に実施します』と答弁している」(同4月15日付け鶏鳴新聞)というスピーチに凝縮している。
「ブレずに」、この方らしい言い回しだ。補足するなら、「後先考えずに」という形容句を添えてやりたい。園芸作物課花き産業・施設園芸振興室長時代に、華々しくぶち上げたものの、決して成功とは言えない次世代施設園芸事業の例があるからだ。とにかく派手にアドバルーンを打ち上げて財務省から予算を獲得する術は天下一品だ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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