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110万tは、かなりの大風呂敷。14年産生産量の約6倍になるからだ。その目標達成に農水省はさらなる交付単価アップで応じようとした。財政負担増大を意味する。それを懸念した岩元達弘主計官(当時)が釘を刺してきた。
「現在の財政支援の仕組みを継続すると、機械的試算では飼料用米に対して1160億円から1600億円程度」
このとき、見直しの根拠に使ったのは、例の平成30年問題、通称「減反廃止」、正しくは国による米の生産数量目標の配分廃止だ。13年に農林水産業・地域の活力創造本部で決定した「農林水産業・地域の活力創造プラン」で減反廃止が決まり、18年産からは需要に応じた生産を目指すことになった経緯がある。
同プランに盛られた米政策の方針は、02年に政府が決定した「米政策改革大綱」を反映したもので、財務省は、飼料用米の推進が「消費者重視・市場重視の考え方に立って、 需要に即応した米づくりの推進」と相容れないと指摘した。
高額交付金をつけて飼料用米の生産に誘導することは、生産数量目標の配分を廃止して需要に応じた生産を目指す基本方針とは確かに相容れない。これを根拠にした財務省の言い分は説得力がある。政府が定めた米政策大綱の基本路線をしっかりと踏まえたもので筋が通っているからだ。農水省の逆手をとった財務省は技ありだ。
財政制度分科会の議論は、18年11月、19年度予算編成に向けた「建議」としてまとめられた。ポイントは、交付金単価のあるべき姿が再確認されたことだ。
「水田活用交付金の交付金単価は、基本的には転作した場合に主食用米と同程度の所得が確保できるように設計されている」
「水田活用交付金による飼料用米等への誘導が過剰に働いているため、農家の作物選択に大きな歪みを与えていることは否めない。水田活用交付金の政策目的を再考するとともに、交付金の制度設計の在り方を検討すべきである」
あらためて表4の19年度予算をご覧いただきたい。農水省の概算要求3304億円に対し、財務省は89億円の減額査定で3215億円とした。さらに年度内に254億円の減額補正があった。補正後予算額では18年度より98億円が削減された。翌20年度には、概算要求額に対して165億円もの減額査定が行なわれている。
そして20年4月、財務省は農水省に対し“勝利宣言”した。凱歌を上げたのは中澤正彦主計官。財務省広報誌「ファイナンス」に寄稿した
“勝利宣言”は、これだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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