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「シイタケ農家も営業に行くし、レンコン農家も行く。徳島からわざわざ4人が東京に営業のために行くんだけれども、その営業を共有できないか。売り先も共有しようという発想で会社を作った」
これまで鳴門金時を買ってもらっていた顧客に、コメも、シイタケも、レンコン、コマツナ、トマトもあると営業できれば、ほかの農産物も買ってもらえるかもしれない。そうなれば、同一の売り先に納品することになるため、チャーター便の手配もしやすくなる。
個人経営の農家と持ちつ持たれつ
地域の農家と連携した組織づくりに加え、稲作で、農家との双方向の助け合いが自然と生まれている。田んぼを預ける地権者は、高齢で離農したり、まだ若いけれどもほかの作物の栽培で忙しかったり、機械の更新ができなかったりと、さまざまだ。
一方の樫山農園は、機械はそろっているものの、稲作を担当する社員は6人で、人手に限りがある。耕耘、田植え、稲刈りといった作業はできるけれども、水管理や草刈りといった管理作業で、自前では賄いきれない部分もある。
「その部分を個人経営の農家に委託してもいる。持ちつ持たれつで、地域の農地が回ればいいなと」
樫山農園の特徴の一つが、若さだ。19年まで3年連続で新卒を採用した。20代が9人いて、平均年齢はパートも含めて31歳だという。ただ、採用には苦労している。若者が東京や大阪に流出する上、徳島県内には大手企業の本社や工場もある。
「農業に競争力がない。将来性があるのは大企業だと学生の目には映るのだろう。より将来性があるのは農業の方だと思っているけれど、十分伝えられていないというのが一つ。それに、賃金の設定がほかの大企業と比べると低いのが一つ」
樫山は、採用に苦労する理由をこうみる。社員が成長を実感できる会社にしたいと、人事考課制度も作った。
「売上高として最低10億円は行かないと、一般企業のように生活基盤としての仕事にするのが、なかなか難しいのかな。まずは、将来性を描ける、夢を託せる会社にならないといけない。やれる限りの挑戦をしようと思っている」
20年後のビジョンも社内で作った。掲げるのは、売上高100億円。耕種農業では、未踏の領域だ。「若い人が、後に続こうと思ってくれる農業をしたい」。21年3月に完成する新しいハウス群を足がかりに、理想に一歩近づこうと、飛躍を誓っている。 (敬称略)
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樫山直樹 カシヤマナオキ
(有)樫山農園
代表取締役
1978年、徳島県石井町生まれ。2000年、阿南工業高等専門学校卒業。アメリカで研修し、ワシントンのカレッジで学んだほか、1年半にわたりカリフォルニアの農場で労働者のマネジメントを経験。02年に帰国し、父・博章のトマト栽培を中心とする経営に加わる。05年から水田の受託事業を始め、水田面積は今では100haに。関連企業の(株)た組、ほのか(株)、あのか(株)の代表を兼ねる。
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