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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第23回 反逆のワイナリー 雨の多い宮崎でワイン造り (株)都農ワイン(宮崎県都農町)
- 評論家 叶芳和
- 第43回 2020年12月24日
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■自然派は嫌いだ
小畑暁氏(62歳)は、北海道旭川生まれ、帯広畜産大学(食品化学科)卒である。「自分は油脂の分析屋」と語る。醸造学とはかなり距離がある。
青年海外協力隊で南米ボリビアに行き、その後、南九州コカコーラ海外事業部(南米対応)に勤務していた時、都農ワイナリーの立ち上げを知り、96年6月、創業時から工場長として迎えられた。ワイン技術は米国ナパバレーで研修した。国内では高畠ワイナリー(山形県)およびマルス山梨ワイナリー(山梨県)で研修し技術取得した。油脂分析屋が造るワインは面白いものになるのではないか。ワイン屋と違って「科学的」である。
小畑氏は「自然派」は嫌いという。ワイン醸造で「天然酵母」を使うワイナリーがある。小畑さんも遊びで使っているが、製品としては出していない。うまく成功できていないようで、途中、諦めて乾燥酵母を入れるようだ。「自分は天然酵母を信じていない。自然派は嫌いだ」「亜硫酸は使うべきだ。頭が痛いと言って使わないのはバカだ」。
「自然派」というファッションにハマってはいけないという。ワインは農業と言いつつも、「食品加工業」だ。自然派のワイン醸造家は芸能人やマスコミにもてているが、まるで「芸能人」じゃないか。醸造の基本をおろそかにしてはいけないと、時代の流れを嘆いている。牧内台地のテロワールを大切に思うのは人一倍であるが、自然任せではなく、科学的知見に基づき牧内台地の個性を引き出そうとしている。帯広畜大出身の故か、「分析的」で、結構「科学的精神」を感じさせる。
■経営概況 年産21万本
都農ワイナリーは、牧内台地の自社農園から60t、生産者(40軒)から150tの原料ブドウを調達している。自社農場は9.5haで、成園7.5ha、あと2haは植えたばかりである。ワイン生産量は750ミリリットル21万本である。
生産者からの購入ブドウで造るワインは、地元向けワインであり、価格は1000~2000円である。自社農園のワイン専用品種で造るワインは付加価値が高く、3000~5000円、県外に売っている。ワインの出荷先は県内75%、県外25%である(金額ベース。数量ベースでは県内がもっと多い)。
醸造場は、大小のタンクが所狭しと並んでいる。タンクは冷媒を使い10度に冷やしているので、結露ができている。瓶詰工程のボトリング速度は1時間1500本である。小畑氏の前職はコカ・コーラ勤務であったので、もっと速いと思ったが、案外ゆっくりだ(筆者の現地ルポによると、秩父ワイン1400本、北海道ワイン4000本、アルプスワイン7000本である)。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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