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この事故がドタキャンにつながったかどうかは分からない。ただ、そのタイミングからすると、ナイルワークスが自主的に出展を見合わせたか、製造受託したソニー系子会社VAIO、あるいは同社製ドローンをかつぐ住友商事が出展見合わせを進言したか、そのいずれかだろう。コロナの影響が理由なら、9日前に出展見合わせを決めるということは、ちょっと考えにくいからだ。
不十分だったフェイルセーフ機能
JA夢みなみは、20年産のシーズンに住友商事からリースでナイルワークスが発売したばかりの最新鋭Nile T-20を2機導入。8月3日からカメムシ防除に使っていた。事故が起きたのは、防除の後半戦。操縦にも慣れてきた頃だったが、ドローンが風に煽られてバランスを失ってぶつかりそうになった。職員が、プロペラのガード部分に右手を伸ばしてドローンを制止しようとしたところ、指3本がプロペラに触れて骨折してしまったということだ。
このプロペラガードはナイルワークス製ドローンのセールスポイントだった。過去にラジコン・ヘリコプターのプロペラ接触による頸動脈切断等の死亡事故が起きていたことから標準装備にすることにしたのだ。
JAの通報を受けた国交省は、原因分析を行ない、是正措置を講じた。内容は、同省サイト「無人航空機に係る事故トラブルの一覧」で公開されている。原因分析は次の2点。(1)「着陸時に機体が傾いて接地したため、着陸判定が出来ず、その時点でモータを停止せず姿勢制御を継続した」、(2)「接地した後に、ドローンを安定して制御するために必要な電圧(36.0V) を下回っていた」。
この分析を読む限り、操縦者側のヒューマンエラーと制御システムの不備を指摘している。前者は(1)、後者は(2)に該当する。ヒューマンエラーも、どちらかといえばナイルワークス製に共通する機体構造の特徴から起きたものと思われる。
Nile T-20は、飛行中に異変を感じた場合、マニュアル操作で緊急停止と危険回避操縦ができる。なぜか後者は上昇・下降の操作しかできない。これでは十分な危険回避の操縦ができなくなる恐れがある。フェイルセーフ的な衝突回避機能が不十分だったのではないか。信頼されるドローンの条件は、緊急時には前後・上下・左右に衝突回避できる操縦機能を備えておくことだ。
是正措置として本来指摘しておくべきは、上下しか危険回避の操作ができない点にあるはずだったが、なぜかスルーして、低電圧誤動作防止機能や着陸判定機能の一部について改良を指示するにとどまった。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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