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当地はミカンなどの柑橘類やブドウの生産地である。近年、作付面積が減少したことにより二つの問題が発生している。
一つは40年ほど前に発足した県営畑灌水事業の継続に関わる問題である。この事業は香川用水事業の一環で各地に水を引く事業である。私の地域では畑灌水事業の受益者は約110戸、受益面積は約19haになる。当時の県との取り決めにより、受益者たちは毎年、施設の維持管理にかかる賦課金と水利費を「所有面積に応じて」納めることになっている。その徴収は自治会の畑灌組織に受益者たちが持ち回りで務めている。しかし、近年、その徴収が難航するようになった。受益者である地主の世代が変わり、子や孫の世代が離農しているからだ。水利費は「末代まで」で地主が払い続けることになっている。農地を使用していないのに、なぜ賦課金や水利費を払うのかというのが支払いを拒む理由である。
事業が始まった当時は大いに盛り上がり、農薬散布のための大型施設も建設された。いまでは施設全体が老朽化し、施設は補助金を使って維持管理しているものの、ポンプが壊れて使用できない場所も多い。私自身も使用できない施設のための賦課金や、栽培条件が悪く使用していない農地の水利費を支払うことに疑問を感じる。
5年ほど前、県が譲歩案を出した。「香川用水事業から脱退したい人は管轄する畑灌水の組織が同意し、1平米当たり26円を土地改良区に支払えば脱退を許可する。また、死亡後に相続する人がいなければ脱退できる」というものである。
しかし、もし一人に脱退希望を認めれば、8割の地主たちが脱退を希望し、2割の営農を続けている人たちが反対し、畑灌水組織としては個人の脱退を認められないだろう。仮に香川用水事業から地域全体で脱退する場合は950万円と補助金未償却分、および、香川用水の水利権を放棄する場合は26円×19ha= 494万円の支払いが生じる。畑灌水組織には200万円しかないので地主たちから徴収しようとすれば反対が起きるだろう。
もう一つの問題は、事業により税金が投入されているので、農地が荒廃していても地目変更ができないということである。特例として農業用資材置き場とすると農業委員会に申告し、3年の経過観察後、雑種地に地目変更ができる。これを悪用し、地目を雑種地に変更した直後にそれを宅地に地目変更し、すぐに売却した人も出てきている。これに対し法務局はほぼ野放し状態で、不満があるなら当事者同士で裁判でもしたらよいと責任転嫁した。使用されていない農地のなかには住宅地として活用できる土地もあるが、農薬の飛散を防ぐためにも地域全体の計画が必要である。
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