ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第24回 東京にもワイナリーがある都市型ワイナリーの存立形態

短絡的なワイン学から離れた瞬間、ワイン造りがおもしろくなる。地元でブドウを供給できない東京こそ、ワイン造りの醍醐味が味わえる。産地規制AOCやテロワール論から解放された東京は、ワインビジネスが楽しい。東京には六つのワイナリーがある。どのような形で存立しているかをみた。

東京のワイナリーがおもしろい

東京にワイナリーが続々とオープンしている。東京ワイナリー(2014年)、清澄白河フジマル醸造所(15年)、深川ワイナリー(16年)、Book Road(17年)、ヴィンヤード多摩(15年)、渋谷ワイナリー(20年)。ワインビジネスがどんどん広がってきている。
〈ワイン造りが〉楽しい、〈見ていて〉おもしろい、〈食べて飲んで〉美味しい。東京のワインのことだ。短絡的な「ワイン学」の束縛から解放されたワイン造りだ。楽しむ造り手、楽しむ消費者、新しい産業社会が形成されている。

[1]深川ワイナリー東京(江東区)――ワイン学の教義からフリー

東京の下町・深川に「ワイナリー」が誕生した(2016年)。ブドウを栽培する場所もないところにワイナリーが立地、それだけでも新鮮な驚きだが、やること成すこと全て新機軸だ。「海中熟成」やビル屋上でのブドウ栽培、黒ブドウで白ワインを造る、等々。
深川ワイナリー(中本徹代表)はイノベーターだ(醸造人・上野浩輔氏)。大消費地に立地し、その強みを生かすことで、短絡的な「ワイン学」から解放されたことが、イノベーションの引き金になったのであろう。街が変わった(町も)。深川ワイナリーはおもしろい。

■街中で一年中醸造している
深川ワイナリーは新しい価値と物語を提供する「コト創り」を目指している。飲食会社(株)スイミージャパン(中本徹社長)の経営である。
下町・門前仲町、清澄通りを横道に入るとすぐ、看板が目に入る。深川ワイナリーはわかりやすい所にある。道路に面した入り口から入るとすぐ醸造場、華やかな甘酢っぱい香りが立ち込めている。
醸造責任者の上野浩輔さんが、紙芝居のように手作りの教材でワイン造りをレクチャーしながら、ワインを試飲させてくれた。ワイン醸造を見て・知って・体験できるワイナリー、つまり、ワイン造りをお客様に「見える化」した醸造所が中本社長の方針のようだ。
生産規模は、年産2万本である。下町・深川にはブドウ畑はない。原料ブドウは北海道、青森、山形、長野、山梨など地方からの調達(多いときは20t)のほか、海外からも輸入している。日本のブドウが入ってこない季節には、南半球のオーストラリアとニュージーランドから計10t輸入している(グループ内他醸造所の分も含む)。
つまり、年1回しか収穫できないという国内産地の制約から解放されているので、年中、醸造できるわけだ(国内産地でのワイン造りは収穫期の9~11月、輸入ブドウは3月収穫、日本着5月末~6月)。
ブドウ輸入は「冷凍」(マイナス24度)で輸送しているが、解凍したら自然発酵が始まるという。初耳、おもしろい(冷凍下でも酵母は生きているのである)。白ワイン用はジュースで輸入する。

関連記事

powered by weblio