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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第24回 東京にもワイナリーがある都市型ワイナリーの存立形態
- 評論家 叶芳和
- 第44回 2021年01月28日
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[2]東京ワイナリー(練馬区)――東京の農業を元気にしたい
東京で初めてワイナリーを開業したのは越後屋美和さんである(2014年)。大学の農学部卒で、大田市場で野菜の仲卸として働いていたとき、東京の農家さんと出会い、東京にも意外と農地があって野菜や果物を作っている農家がたくさんあるんだと知り、「東京の農産物を広めていこう」と思い、ワイナリーを興した。
「事業家能力」が高いなァというのが第一印象であった。
■Pioneer's fortune
都市の中で、素人がワイン造りに参入した(練馬区大泉学園町)。ブドウ集めなどで苦労があったのではないかと思い、お尋ねした。
「大した苦労はなかったです。市場にいたので、農家さんや産地と太い絆があり、改良普及員とも知己、東京のワインを造るということで、協力してくれる人がたくさんいました」
東京で「最初の人」と認められたため、応援してくれる人がたくさんいた。ファンもできた。14年、事業を立ち上げるとすぐ、クラウド会社から「やりませんか」と声がかかり、クラウドファンディングで200万円得た。
「東京ワイナリー」の名前も、最初でなければ付けられなかったであろう。「東京ワイナリー」の名前のお陰で、調べて訪ねてくる人もいるようだ。
新聞やテレビの取材も、年間10~20本くらいある。東京で初めてのワイナリーという“パイオニア”であることが、幸運、利益をもたらしている。'Fortune favors the brave.'(幸運は勇者に味方する)という諺があるが、ここではまさに'Fortune favors the pioneer.' (幸運はパイオニアに味方する)と言えよう。
■東京生まれ「高尾」ブドウのワイン
都市立地である以上、原料ブドウの手当てが一番の問題だ。
東京ワイナリーの規模は年産1万本である。搾汁率が60%と低いため、ブドウ必要量は12tである(委託醸造分も含む)。その内2割は東京都内から供給される。産地は練馬、国分寺、国立、日野、府中、東村山である。品種は生食用ブドウが多い。練馬には自社畑もあり(19年から、17a)、21年あたりからブドウ供給できる。自社畑には各品種を植えてあるが、練馬は何が適するか、まだテスト中という。
残り8割は地方からで、北海道、青森、山形(置賜郡)、長野(安曇野および朝日村)から調達している。原則、1品種1地域からで、各地域2tくらいである。地域間のブレンドはしない。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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