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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第24回 東京にもワイナリーがある都市型ワイナリーの存立形態
- 評論家 叶芳和
- 第44回 2021年01月28日
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須合さんに続く第2、第3が現れるか聞いた。「根性が必要です。よっぽど根性がないとできません」「やりたいと思う強い気持ちが大切」「どんな仕事も納期がある。ワインも出来上がるのをお客さんが待っている。納期に間に合わせるには根性が必要です」。
*
ワイナリーは、楽しい産業である。従業員のモチベーションも高揚する。ワイン造りは陶芸家と同じだ。どんな色になって出てくるかわからない、ワクワクした気持ちで出来上がりを待っている。
クリエイティブで楽しい仕事である。都市型ワイナリーは原料立地から解放され、同時に消費者に接近している。
2010年代以降、ワイナリーの新規参入が増えたが、今までは原料立地が多い。しかし、都市型ワイナリーの成功が見えてきたので、今後は大消費地での新規参入も増えるのではないか。
東京は山梨に次ぐワイナリー王国になる夢が馳せる(生産量ではなく、ワイナリーの数)。ただし、日本のワイン産業はまだ揺籃期にあり、テロワールのいい産地でもほんとに美味しいと言えるワインができていないことが、都市型ワイナリーの成長を許しているのかもしれない。
[4]清澄白河フジマル醸造所(江東区)――ワインを身近に感じてもらう
レストラン併設の街中ワイナリー。(株)パピーユ(藤丸智史社長、本社大阪)はワインの業務卸が主業である。「ワインを日常に」をモットーに、ワインショップあるいはワイナリー併設のレストランを大阪で展開しているが、気軽に醸造所も見学でき、ワインを身近に感じてもらえるようにとの期待から、東京の下町・清澄白河にワイナリーを設立した(2015年)。
ワインの敷居を下げたいとの思いがある。もちろん、それがワイン販売の増加につながろう。清澄の併設レストランには月間1000人の顧客がある。
清澄白河フジマル醸造所マネージャーの室谷統氏(41歳)に話を聞いた。
■山形・山梨からブドウ調達
清澄白河フジマル醸造所のワイン生産は、年産1万5000~2万本である。国産ブドウ100%の日本ワインである。
原料ブドウは主に山形県、山梨県から調達している。山形はデラウエア、山梨はシャルドネ、カベルネソーヴィニヨンである。このほか、茨城県からマスカットベーリーA、千葉県から巨峰を調達している。トラック輸送(2t)で、山形から醸造所まで3~4時間で来る。収穫後、冷却処理し、夜間出荷、朝到着することで鮮度保持を図っている(注)。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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