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スマート・テロワール通信

「スマート・テロワール」の今日的な意義


コメ以外の農畜産品の生産を地域自給圏で拡大するために重要な前提条件は二つある。
農畜産品の生産を地域自給圏で拡大するための第一の前提は、遊休水田を永久に畑地に変え、輪作体系を取り入れた畑作穀物を生産することと、遊休水田を家畜の放牧地に変え、畜産品を生産することである。輪作体系と耕畜連携によって、土壌の有機物の多様化と活性化につながり、大地はより豊かになって生産性も向上する。
農畜産品の生産を地域自給圏で拡大するための第二の前提は、地域ごとに小規模な食品加工業が展開されることだ。畑作穀物や畜産品は加工することによって用途が多様化する。例えば小麦はパン、うどん、そば、パスタ、ラーメンなどに加工されると食生活は豊かになる。しかし、現在の日本の食品加工業は大企業の寡占状態にあり、輸入に依存している原料で小麦粉やパンなどを大量生産している。
地域自給圏構想のあるべき姿は、地域の農畜産品を地域の小規模な食品加工業者に供給して多様な製品に加工することだ。
このとき大事なことは、地域内の畑作穀物および畜産品の生産者と食品加工業者との関係が、極めて密接な絆で結ばれることである。毎年播種前または肥育前に量と価格と品質を取り決める。つまり地域内での契約栽培と契約肥育である。価格が変動する市場経済の枠組みから外に踏み出し、価格を事前に決めることによって生産者と加工業者の関係が安定する。安定した経営環境が得られれば、安心して品質の改善に集中できる。地域自給圏は生産者と加工業者が互酬の関係を築き、協働して地域の消費者の期待に応え、地域の食料供給の基盤を構築することにほかならない。
また電力の地消地産も地域自給圏の取り組みの対象である。もちろん自給される電力は再生可能エネルギーだ。グローバル化した我が国の経済システムにおいて最も弱い環である食料とエネルギーが地域内で地消地産される枠組みが形成されれば、地域住民は経済の脆弱性から脱却し、自由を得ることができるようになるはずだ。

地域自給圏構想は「人口の大都市一極集中の脆弱性」を解消する

コロナ禍は、異常なまでの人口の大都市一極集中の脆弱性を示した。例えばコロナ禍の最中に大都市に直下型地震が発生したらと考えると、感染リスクどころか、生活インフラの崩壊、生活必需品の不足、住居の喪失さえも起きる。さまざまな自然災害が大都市を同時に襲うと累積的な被害をもたらすのだ。

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