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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

トルコ 草の根的な活動から広がるヘンプ織物の復活劇

北は黒海、南は地中海に面した、アジアとヨーロッパの2つの大州にまたがるトルコ共和国。人口は約8200万人で、土着の遊牧民、ヨーロッパ系、中東系、アフリカ系、アジア系などが入り混じる多民族国家である。前身のオスマン帝国は、最盛期には中東からアフリカ・欧州にまで勢力を広げ、その都が置かれていたイスタンブールは東西南北に通じる十字路として古くから物流・補給拠点として栄えた。ユネスコ世界文化遺産が各地にあり、日本とも江戸時代から友好関係を築いてきた。
国土面積は日本の約2倍あり、農用地がその半分を占める。労働力の約25%が従事し、ヘーゼルナッツ、サクランボ、イチジクの生産量は世界第一位を誇るなど、地域ごとの気候差を活かした多種多様な農業が展開されている。

かつて世界第10位を誇ったヘンプ産業の衰退

ヘンプは中央アジア原産とされており、地理的に近いことから比較的早い時代より栽培され、ヘンプ製品が利用されてきたと考えられている。最も古い痕跡は、ユネスコ世界遺産の古代都市チャタルホユックで最近発見された約9000年前のヘンプ生地である。14~20世紀初頭に周辺地域に強大な勢力を誇っていたオスマン帝国時代は、黒海、エーゲ海、地中海を支配するために帆船が活躍し、帆布やロープの需要が高まった。
1930年代の記録によると、約4万haで栽培され、1万tの繊維製品を生産し、その規模は世界第10位だった。栽培地はトルコ北部が中心で、良質なヘンプ繊維の採れたカスタモヌ県の当時の写真を見ると、高さ4m近い立派なヘンプだったことがわかる(図1)。
ヘンプ、またはヘンプ繊維からできた製品は、トルコ語で「ケンディール(kendir)」と呼ばれている。当時、ヘンプ繊維は太さによって4種類に分けられていた。細い順に「ツウィン(糸)」は最も細いタイプの糸で、夏のドレス、ベッドリネン、アッパーシーツ、袋生地、イスラエル圏の女性の頭を覆うヒジャブに用いられた。「ストリング(紐)」はツウィンより太い糸。「テザー(縄)」は包装用の紐を指し、別名ケーブルヤーンともいう。太さと長さが標準化され、最も広く使われていた。テザーより太い「ロープ(綱)」は、オスマン帝国海軍をはじめとした船の索具に使われた(図2)。

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