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【スマート・テロワールの実践者たち】
「農民として幸せに暮らすため」に始めた放牧酪農 茨城県稲敷市 上野 裕さん(新利根協同農学塾農場)
- 株式会社日本総合研究所 調査部 主席研究員 藻谷浩介
- 第1回 2021年02月25日
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牛土草の循環から生まれるおいしい牛乳と楽しい暮らし
♪ただ一面に立ち込めた 牧場の朝の霧の海 ポプラ並木のうっすりと……♪
平野らしきもののない山口県で高校卒業まで過ごした筆者にとって、この唱歌のような光景は、いつか見てみたい夢の景色だった。東京都心からわずか80km、高速道路で1時間の場所に、その歌の通りの場所があったとは。
東関東道を東に、成田空港への分岐を過ぎた先で圏央道に入る。利根川を渡り、稲敷東ICで降りて数分。今通ってきた道の橋脚の立つ利根川河畔に、新利根協同農学塾農場は広がっていた。
土地の広さという絶対的制約に営農規模や農法を合わせる
採草地込み面積13ha、放牧面積6haに、家族3名で、搾乳頭数32頭、育成牛10頭を飼う。機械投資に見合う規模ではなく、適正頭数を守れば牛は増えない。そんな事業環境で、悩んだ末に2005年に試してみたのが、春から秋に放牧を行ってコストを下げることだった。
それまでは牛舎内で輸入飼料を与え、経費をかけて糞尿を処理していた。しかし放牧にすると、糞尿が草を育て、それを食べた牛が健康になって子牛が増えるという好循環が起きることを、上野さんは大発見したのである。「放牧を始めてみると、乳量は半減しました。でも牛は元気になり、子牛も自然分娩で産まれるようになりました」。
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藻谷浩介 モタニコウスケ
株式会社日本総合研究所
調査部 主席研究員
山口県生まれの56歳。㈱日本総合研究所主席研究員、一般社団法人スマート・テロワール協会理事。平成合併前の全3,200市町村、海外114カ国を自費で訪問し、地域特性を多面的に把握。2000年頃から精力的に、地域振興や人口成熟問題に関する研究・著作・講演を行なっている。著書に『デフレの正体』『里山資本主義 』(共にKADOKAWA)、『世界まちかど地政学Next』(文藝春秋)など。共著に『進化する里山資本主義 』(Japan Times)、『東京脱出論 』(ブックマン社)。日本農業新聞のコラム「論点」に、2014年以来、年2回寄稿中。
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