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スマート・テロワールの実践者たち

「農民として幸せに暮らすため」に始めた放牧酪農 茨城県稲敷市 上野 裕さん(新利根協同農学塾農場)

1947年に祖父たちが水田として開拓し、1963年に祖父と父たちが酪農を始めた、利根河畔の湿地。2005年に初めて、思い切って牧草地に牛を放ってみた朝、牛たちは本当に嬉しそうに、生まれて初めてのはずなのにまるで生まれたときからそうしていたかのごとく、大地に生えた草を噛み始めたという。

牛土草の循環から生まれるおいしい牛乳と楽しい暮らし

♪ただ一面に立ち込めた 牧場の朝の霧の海 ポプラ並木のうっすりと……♪
平野らしきもののない山口県で高校卒業まで過ごした筆者にとって、この唱歌のような光景は、いつか見てみたい夢の景色だった。東京都心からわずか80km、高速道路で1時間の場所に、その歌の通りの場所があったとは。
東関東道を東に、成田空港への分岐を過ぎた先で圏央道に入る。利根川を渡り、稲敷東ICで降りて数分。今通ってきた道の橋脚の立つ利根川河畔に、新利根協同農学塾農場は広がっていた。

土地の広さという絶対的制約に営農規模や農法を合わせる

採草地込み面積13ha、放牧面積6haに、家族3名で、搾乳頭数32頭、育成牛10頭を飼う。機械投資に見合う規模ではなく、適正頭数を守れば牛は増えない。そんな事業環境で、悩んだ末に2005年に試してみたのが、春から秋に放牧を行ってコストを下げることだった。
それまでは牛舎内で輸入飼料を与え、経費をかけて糞尿を処理していた。しかし放牧にすると、糞尿が草を育て、それを食べた牛が健康になって子牛が増えるという好循環が起きることを、上野さんは大発見したのである。「放牧を始めてみると、乳量は半減しました。でも牛は元気になり、子牛も自然分娩で産まれるようになりました」。

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