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そんなところで育ったわけですから彼女は田舎暮らしの大先輩。
20代には数年間
90歳のおばあちゃんの
自宅介護も経験し
田舎の良いとこ悪いとこ身にしみるほどにわかっておられます。
移住者よそ者外国人を通り越して
宇宙人と称されるほど
自分の思う通りにどんどん進む僕とは正反対。
田舎で暮らすということにおいて
最低限押さえておかないといけないポイントや
お年寄りが喜ぶようなポイントを
きちん理解しつつ
ゆっくり楽しみながらそれを日々積み重ねているだけあって
集落のお年寄りからは
絶大な人気があります。
僕が自由にやりつつも
集落の方々に迷惑をかけたり
常識知らずの嫌われ者にならずに済んだのは
彼女の存在があったからにちがいありません。
家族で遠出したとき
美味しいものを見つけると
あのおばあちゃん
こんな味が好きやから
おみやげに買ってかえろうかと
言い出すのも決まって彼女。
特に親しい友達というのではないけれど
彼女のように「ご近所さん」をちょっと気にかけて暮らすということで
人間関係を円満に保つというのは
僕らが過ごした昭和の時代には普通にあったような気がします。
ご近所さんで必ず思い出すのが
彼女との結婚式での出来事。
20年前とはいえ結婚式も大昔に比べて合理化されており
レンタルの婚礼衣装は
式場でパパッと着替えるものと思っていたのですが
前述の通り彼女の場合
まだまだ風習やしきたりの残る田舎ですから
婚礼衣装がレンタルでも
着付けは実家。
花嫁というものは婚礼の日に晴れ着を着て家から出るのが当たり前。
しかし困ったことに
彼女の実家はその集落のなかでも
道路からとても急な坂をあがった一番高台にあり
そしてその道が古い石垣に囲まれた田舎特有の細い道。
地元の人はなんとか軽自動車くらい通すのですが
お迎えの中型のタクシーは無理。
必然的に花嫁はウェディングドレスを着たまま
200mもその細い坂道を歩くことになったのですが
それを聞いた「ご近所さん」
朝から総出で
道の落ち葉やゴミをいつも以上に
きれいに掃き清めてくれ
出発の時間にはまた
「ご近所さん」総出で盛大に見送ってくれたそうです。
当時の僕は芸術家。
京都市内でほとんどというくらい
近所付き合いのない気儘な都会の一人暮らし。
誰にも見送られることなく
一人バイクにまたがって
寂しく家を出たのですが
あまりに対照的ですね。
おじいちゃん、おばあちゃんのいる大家族で
そんな優しい「ご近所さん」と一緒に子供時代を過ごした彼女。
時にはちょっと考え方が古いなと思うこともありますが
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山本晋也 ヤマモトシンヤ
副村長
みわダッシュ村
1968年、京都生まれ。美術大学を卒業して渡米後、京都で現代美術作家として活動。そのかたわらオーガニックレストランを経営するも食材を種から作ってみたくなり、京都市内で畑を始める。結婚して3人の子供を授かったころ、農業生産法人みわ・ダッシュ村の清水三雄と出会い、福知山市の限界集落に移住。廃屋を修繕しながら家族で自給自足を目指す。土と向き合ううち田畑と山や川、個人とコミュニティーの関係やその重要性に気がつき、田舎も都会もすべて含めた「大きな意味での自給」を強く意識するようになる。この考え方は、美術家時代にドイツの現代美術家ヨゼフボイスのすべての人が参加して創り上げる社会彫刻という概念に影響を受けた。現在みわ・ダッシュ村副村長。
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