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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

チェコ 寛容な大麻規制でCBD先進国へ 欧州新規食品の壁を越える

チェコ共和国は北海道とほぼ同面積で、中央のモラビア高地以外の大半には低平な丘陵地が広がっている。人口は約1067万人。1989年の「ビロード革命」を受けて、93年にスロバキアと分離後、国営企業の民営化、市場経済に移行し、04年にEU加盟を実現した。農業分野では、ジャガイモや大麦、小麦、ライムギ、ホップの栽培、牧畜が盛んである。ヘンプも19世紀までは亜麻、豆類、テーブルビート、キャベツとの輪作ベースで栽培されていた。
この地のヘンプ栽培は、考古学におけるラベ渓谷の花粉研究により、紀元前200年頃から始まり、9~10世紀頃に盛んだったことがわかっている。チェコ語でヘンプを意味する「コノピ(Konopi)」は、首都プラハ近郊の地名コノピシュチェ(Konopiste)にもなっている。
また、民間信仰にもヘンプに関わる言い伝えがある。中欧・東欧に居住するスラブ人に崇拝されていたモコスは、紡績を司り、女性の健康と子どもたちを世話する女神である。スラブの女性は、モコスに供物を捧げるとき、ヘンプの種子を水に投げたという。また、チェコ(ボヘミア)では、重要な聖なる日に、織り物、編み物、穀物の粉砕などの特定の作業をすることは不吉な行為とされ、行なうとヘンプや亜麻の収穫が悪くなると信じられていた。

繊維・一次加工での失敗

第二次世界大戦以降、ヘンプ栽培は米国の影響を受けた西欧諸国では禁止されていたが、当時のチェコスロバキアは東欧の社会主義国家だったため、栽培を継続できた。04年に改正された精神作用物質法に基づく現行制度では、(1)産業、研究、起業活動を目的とするヘンプ繊維とヘンプ種子の入手・保管・加工には許可が必要ないこと、(2)マリファナの主成分であるTHC濃度が0.3%未満の大麻草の使用を制限しないこと、(3)THC濃度0.3%以上の大麻草を扱う場合は医療使用を例外とすることを定めている。
この規制緩和を受けて、3社がヘンプ繊維の一次加工事業を立ち上げた。後押ししたのは、05年に政府と栽培農家、繊維用途の一次加工会社、その他の関連企業のネットワークとして発足したチェコ共和国ヘンプ協会だ。約5000万円を投じて、収穫機や繊維とオガラ(麻幹)を分離する一次加工機を既存の亜麻工場に設置したほか、他の2社にも一次加工機の導入を支援した。受け皿が拡大したことから、ヘンプの栽培面積は00年の129haから07年には1730haにまで拡大した。

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