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土門「辛」聞

全中と県の農協監査体制では不正行為は絶対に防げない

 まず総代会資料をご覧いただきたい(図1)。そんな農協でも、そこそこ利益を出していて経営上、何の問題もないように見える。それどころか自己資本比率の数字を見れば、三菱東京UFJ銀行も足元に及ばないような「超優良」の折り紙がつく立派な金融機関にも見えてくる。

 資料に目を通して、思わず疑ったのは、「単体自己資本比率」が異常に高い数字であることだ。この数字は、金融機関の健全性を判断する上で重要な指標。少し聞き慣れない専門用語だが、ざっくりと言えば、従来の「自己資本比率」のことで、平成18年度からこのような名称になった。「単体」という表現を使い始めたが、これは「連結」に対する用語と思えばよい。つまり農協「単体」の自己資本比率ということと理解していただきたい。


鹿本農協はトリプルA?

 その数字が、な、なんと19年度決算で「22・01%」になっている。これがどれだけすごい数字か、銀行と比較すれば一目瞭然だ。まず銀行トップの三菱東京UFJ銀行との比較。単体自己資本比率は11・44%だ。鹿本農協の半分しかない。熊本のリーディング・バンク、肥後銀行はどうか。20年3月期決算で12・30%。これまた鹿本農協の半分ぐらいの数字でしかない。肥後銀行に対する国際的な格付け機関「ムーディーズ」は、19段階評価で最高の「AAA」(トリプルA)から5番目に高い「A1」の高評価を下している。

 もし鹿本農協をムーディーズに評価してもらうとなれば、Aが5つや6つぐらいついてしまうのではないか。でも農協のように監査法人による会計監査も受けていない金融機関に対してはムーディーズが評価の対象にしないかもしれない。もっともムーディーズのような格付け機関が万全というつもりはない。世界の金融界を揺るがしているサブプライム問題の元凶は、ムーディーズのような信用格付け機関による甘い格付けが原因とされるからだ。

 少々脇道に逸れて、農協監査体制について触れてみたい。単協でもJA浜松とぴあのように地方銀行並みの貯金高(8518億円)を持つ農協もあれば、貯金高が100億200億程度しかない零細規模農協もある。どんな経営規模の農協でも、経営チェックは身内同然のJAバンクシステムや農協中央会による「内部監査」が基本である。これに都道府県による農協検査が加わる。この問題点は、検査を担当する職員のレベルが決して高いといえないことだ。しかも職員の異動が激しく専門スタッフが育ちにくい環境にもある。

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