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新・農業経営者ルポ

大規模経営こそ技術を語れ

外食産業が急成長した1980年代、新規就農の翌年に外食大手のすかいらーくと取引を始め、契約栽培の先駆けとなった農家がいる。(有)イズミ農園代表取締役の梅津鐵市だ。周年出荷のために全国の農家と提携し、一時はグループの年商が40億円を超えるまでになった。いまでは37haに及ぶ自社農園の経営に注力し、作業効率を追求して梅津を含め7人で切り盛りする。長男の大輔が経営を中心的に担う一方、梅津は自社はもちろん、全国各地の農家に技術と経営の指導を続けている。 文・写真/山口亮子

いま、農業が面白い

「面白いのは、ここ5年くらいで、30代の若い連中がグループ組んで、広い面積をこなすようになっていることだ。この間も、熊本県菊池市で5人でゴボウを30haくらいやっているグループに、3年で300haにしろって言ったら、よしやるぞって。拡大意欲がすごく高くて、周りの農地が空いてきたから、規模拡大をあっという間にできる。こういう人間を育てないといけない」
山梨県北杜市のイズミ農園の事務所で、72歳の梅津はこう言って目を輝かせた。今回の取材は、直前まで実現するかどうかわからなかった。というのも、梅津は月に一度は長期の出張に出て、全国の農家に技術指導をするからだ。そろそろ出かけるから、取材を受けられるかどうかわからないと言われていたものの、梅津の出張のタイミングがずれ、幸運にも取材が実現した。
「一昨日は静岡県牧之原市で茶を50haやっている農家が、新しく畑を借りたと言うから、土を見に行った。その前日は、長野県塩尻市に行って、苗の作り方を指導していたんだ」
かつて有機農法にも取り組んだ梅津は「梅津農法」と呼ばれる独自の農法を確立し、全国の農家に伝授して回っている。その特徴は一言でいえば、減農薬・減化学肥料になる。ただし、減減栽培を志向しているわけではないという。
「そういうことはあんまり考えていないんだ。でも結果は、基本的に減減になっている。農薬にしても、11月に出荷するキャベツは、全然虫がいないから、1回しかかけていない。キャベツで農薬が1回で済むっていうのは、俺だって不思議だけど、丈夫なものを育てたら、そういうふうになるんだよ」

二価鉄と海水で土壌改良

梅津は、約500haを耕作する日本最大級の農業法人、黄金崎農場(青森県深浦町)の経営再建でも、梅津農法を使った。38年前に開発した二価鉄資材を手にしつつ、「これと海水で畑を直して、黄金崎農場の2億5000万円の売り上げを5年で5億円にした」といたずらっぽく笑う。二価鉄は不安定な状態にあるため、安定しようと酸素原子を奪ったり、電子を放出したりするとされる。この資材は、土中の病原菌を殺し、病気の発生を防ぐのに使う。

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