ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

大規模経営こそ技術を語れ


梅津は、畜産の飼料が米国産の濃厚飼料に切り替わり、加えて昔に比べ敷きわらなどの繊維質が少ない堆肥が増えたために、病気が発生しやすくなっているとみる。肝心の腐植が少なく、栄養分ばかり多く含む堆肥は、従来の感覚で畑に入れるべきではないと指摘する。
「農業関係者はみんな、品種だとか農薬の選び方には熱心だけど、土をどう作るかは、たとえ熱心であっても、ちょっと方向が間違っている。連作障害が出たら堆肥を入れなさいという指導が多いけど、いまの堆肥はたぶん50年前と比べれば3倍から4倍は栄養分が濃いじゃない。そうするとフザリウムといった病原菌が繁殖しやすいから、堆肥を1年間雨に当てて、栄養分を落として腐植にしてから畑に入れろと俺は言う」
微量要素への理解も乏しいと指摘する。それが端的に表れるのが、農林水産省による水耕栽培の推進だという。現状の水耕栽培は、レタスが結球しにくいなど、畑と同じ環境を再現できていない。梅津は野菜が微量要素をどう吸収するかという仕組みが、栄養学の面で見落とされがちだと感じている。
「水耕栽培の方が、(栽培できない、あるいは結球不良になる野菜を除けば)形はよくできる。農水省の補助金も、土耕より水耕の方が付きやすい。農業全体が水耕栽培へと動いているから、トマトは美味しくなくなるよ」
梅津の言う通り、かつて桃太郎トマトの露地栽培が盛んだった北杜市も、水耕栽培が急拡大している。

高齢者も含めて地域農業守れ

梅津は若手農家に技術と経営を指導するのに加え、地域農業を支える視点を持つようにと、口を酸っぱくして言っている。
「いいか、お前ら、自分だけが良ければいいじゃなくて、70歳、80歳になった年寄りたちにどういう小さい農業をやらせるか考えろ。つまり農業経営っていうのを、自分たちのこともさることながら、若者だって絶対に年寄りになるわけだから、永続的にちゃんと働けるようにしておけよ。それが地域を守ることだろう」
こう言い含めているのだ。例えば鹿児島県なら、ハウスの中で作る10a当たり100万円以上になるような品目を選んで、高齢者に5a栽培してもらう。農家と結婚する女性には都会で暮らした経験を持つ人も多いから、地域の中だけにいては得にくいセンスを生かし、レストラン運営や加工をして、高齢者が作った青果を消費者につなげる。
「消費に近い方がお金を取れる。地域にある、農業だけではなく、漁業、観光業といった要素をいろいろ組み合わせながら、どういうことをやっていくか考えるんだ。広大な面積の農地が余っているところで大規模経営をしながら、一方で小さい農業も考える。どっちも農業に変わりはないわけじゃん。こういう感覚なんだよ」

関連記事

powered by weblio