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特集

「ゲノム編集食品」として初めて届け出されたゲノム編集トマトのこれからを占う


さらに、2000年には米国から輸入された飼料用トウモロコシから未承認のGMコーンが見つかり、イメージは一気に悪化した。当時、私は毎日新聞社生活報道部で記者をしていたが、反対する市民団体は一気呵成に責め立てていた。

【自治体が市民運動を後押し】

そういう状況の中、市民の気持ち、感情に敏感な地方の自治体が次々にGM作物の栽培を実質的に禁止する条例を制定し始めた。2005年に北海道を皮切りに、岩手、宮城、新潟など、GM作物の栽培を実質的に禁止する条例が全国の自治体に広がったのだ。
もちろん、GM作物を日本でも栽培しようとした生産者たちもいた。その代表的存在である「バイオ作物懇話会」は、除草剤をまいても枯れないGM大豆を栽培したいとの願いから、茨城県などで試験栽培を試みていた。ところが、茨城県内の畑が反対派によってショベルカーでつぶされ、栽培しようとする農家の活動は息の根を止められてしまった。
通常なら、仮に私が勝手に他人の畑に侵入して作物を根こそぎつぶせば、刑事事件になり、逮捕されるはずだ。ところが、市民運動が畑をつぶしても、罪を問われなかった。この事件を契機に農家の積極的な動きはほぼ止まった。希望も消えた。

【「組換えではない」表示で消費者は洗脳】

一方、農林水産省は家畜が食べる飼料用のイネなら、なんとか受け入れられるとみて、GMイネの栽培計画を立てていた。だが、2009年に旧民主党政権が誕生し、計画はすべて白紙に戻った。結局、日本はただ単にGM作物を輸入するだけの国になった。
そして現在、スーパーに行けば、「遺伝子組換えではありません」との表示ばかりが目につくようになった。毎日のように「組換えではない」との表示を見て買い物をすれば、知らず知らずのうちに消費者は「組換え作物は危ないもの」とのイメージを刷り込まれていくだろう。「組換えではない」との表示は消費者をすっかり洗脳したのである。
その結果、日本に輸入されるGM作物(大豆、トウモロコシ、ナタネ、綿)は、表示義務のない食用油、家畜の飼料、清涼飲料の甘味料という目に見えない用途に使われるという悲劇が生まれた。

【ゲノム編集食品とGM作物の違いを判定】

では、こうしたGM作物の苦い歴史に対して、ゲノム編集食品は、どのように評価したらよいのだろうか。
そこで、消費者に受け入れられるかどうかの判定基準を10項目にまとめ、GM作物とゲノム編集食品を比べてみた(表1参照)。大きな違いが分かるはずだ。現時点では、ゲノム編集食品へのイメージは、GM作物と比べれば、格段によいことが分かる。

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