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スマート・テロワールの実践者たち

天地人の一致が生んだ耕畜連携の鏡


コロナ禍が外食産業を直撃し、全国に販路を持つ同社も危機にさらされた。しかし高橋社長は、ポケットマルシェで畜産部門1位になるなど通販での売り上げを躍進させ、ふるさと納税対応も合わせて荒波を乗り切っている。
とはいえ高橋社長は、盛川農場のことは知らなかった。広い花巻市、人材交流面での耕畜連携はまだまだ進んでいなかったのだ。連携のきっかけは、2013年に試作した4tの販売先を探す盛川代表が、訪ねてきたことだったという。足で販路を開拓した盛川代表、その買取を即決した高橋社長、いずれの起業家精神にも頭が下がる。

“本当の国産”を目指すきっかけは海外からの視点

盛川代表の訪問は、実は絶妙なタイミングだった。2012年から豚肉の輸出を模索し始めた高橋社長は、商談先の香港でこう言われたのだという。
「我々香港人は、日本旅行で豚がおいしいことに気付いている。でも品種は欧米と同じ。飼料も全量輸入。それで日本産と言っても、実質はどこにあるのですか」
育て方が違うので味が違う、脂身の質が違う、日本産は日本酒にぴったり合うと、いろいろ説得して2013年からの輸出を成約させたが、確かにその質問は本質を突いていた。国内にも米国産のKurobutaが浸透し始めているが、これも同じ問題の裏返しの表れかもしれない。「育てた場所」だけでは、ブランドとしては弱いのだ。
「飼料も国産化できないのか」と考え始めたところに、ちょうど盛川代表が国産品を持ち込んだのである。何かがなされるときには、往々にしてこのような「天地人」の一致が起きるものだ。
輸出と輸入品への対抗の両面からの、豚肉産業の国際化という「天の時」。盛川代表と高橋社長が同じ花巻市内で営農していたという「地の利」。異なる業態、年代を、年長の盛川氏の営業姿勢が結び付けた「人の和」。その先に新たな地域内循環が産まれたというのは、「スマート・テロワール」の理念のあまりに素晴らしい実践例といえるだろう。

現場の努力に負けない国の補助制度の工夫を!

地域内循環としては理想的な、豚飼料のトウモロコシの地域内生産。しかし、クマなどの獣害対策、収穫、保管、価格と、課題は山積している。収穫機用のアタッチメント購入は農家側の負担となるし、生産に日本人の人件費がかかる以上、輸入品との価格差は残る。既存の収蔵庫を使える飼料米と違って、保管手段を工夫し、倉庫に投資しなければならない。モミ殻がないので、湿気の高い日本ではカビが早いのだ。この点については、盛川代表と高橋社長は連携して、乾燥させての室内保管や、HMSC(粉砕し密閉包装しての屋外保管)を、いろいろ試行している。本誌の他の記事でも紹介されることがあるだろう。

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