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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

国際規格 ASTM D37によるヘンプの標準化の動き


実際に標準化を進めているのは、17年にカナダの農家から提案を受け、ASTMが設置した「D37
Cannabis(以下、D37)」という大麻草の標準化委員会である。D37には、業界団体や学術機関、研究所、サプライヤー、栽培者、行政、輸送機関、ソフト事業者、認定機関など、12カ国を代表する300名以上のメンバーが所属し、10の専門的な技術委員会がある(表1)。
技術委員会の名称を見ると、医療用および嗜好用大麻の分野を想定したものが目立つ。とりわけ最も早く合意し、18年5月に発効した2つの規格はいずれも、医療用・嗜好用で用いられる花に関わる「大麻の花の水分活性を決定するための標準的な方法」と「乾燥大麻の花の許容水分活性(0.55~0.65)を維持するための標準仕様」である。水分活性は一般的に食品中の自由水の割合を表す数値で、食品の保存性の指標に用いられている。大麻草の花も、水分が多いとカビや微生物の発生原因となることが知られており、これらの規格は品質の安定化に貢献する。
ちなみに、このASTM規格の日本の窓口は日本規格協会(JSA)である。そのホームページ上で「大麻」という用語を検索すると、該当する規格文書を有料(6000円前後)で取得できる。

産業用ヘンプの標準化へ

医療用・嗜好用は国際的にも話題性に富み、“グリーンラッシュ”と呼ばれる5兆円という市場規模の注目分野なので、D37の設立当初、産業用ヘンプの技術委員会は設置されていなかった。カナダヘンプ貿易連盟(CTHA)や欧州産業用ヘンプ協会(EIHA)らがASTMと交渉した結果、18年10月に、ヘンプ専門の技術委員会(D37・07)が正式に追加されたのだ。同時に年2回、毎年1月と6月に開催されるD37の全体会でも、ヘンプに関する議論が進められている。
標準化でも「大麻草」と掲げているものの、医療用・嗜好用の分野のみを扱う流れができつつあった。そのなかでヘンプに特化した議論を行なう技術委員会を設置できたことは、ヘンプ産業にとって大きな意義がある出来事である。
ヘンプの標準化における課題は前途多難なほど多岐にわたる。具体的には、カンナビスとヘンプなどの用語の定義、種子・繊維・樹脂などの分類、品質における見た目や匂い、THC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量、汚染物質の限度基準、ヘンプ繊維や種子の試験方法と等級、栽培・加工・取り扱い・流通・試験などのガイドライン、セキュリティ、品質管理、データ入力などの実施法などがある。とくに、ヘンプ品種のTHC濃度の上限基準は国によって0.1~1.0%と幅が広く(本誌18年1月号参照)、現段階では各国のヘンプ協会の統一見解として1.0%を推奨することが提案されている。また、表2に示したとおり、ヘンプ種子やヘンプ建材に関わるワーキング・グループが設置され、検討が行なわれている。

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