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山口亮子の中国のアグリテック最新事情

農業用ドローンの雄、XAGが目指すもの

ドローンで世界を牽引し、BATをはじめIT大手が次々と農業に参入する中国農業の今をジャーナリストの山口亮子氏が連載で紹介する。日本と中国の農業は、従事者が多いうえ、個々の経営面積が小さく、農村の過疎・高齢化が深刻といった共通課題が多い。日本の農業者の参考になるものや日本の農政を考えるにあたって手本となるような事例もある。礼賛でもなく、頭ごなしの否定でもない、ニュートラルな中国農業像を伝える。

散布実績42カ国4000万ha

「日本では30年前から無人機(ヘリコプター)による薬剤の散布を始めているけれども、中国ではここ5年の実績だ」
2019年10月に開かれた日本最大の農業生産資材の展示商談会「農業Week」で、壇上に立つXAG(極飛科技)の共同創業者で副社長のジャスティン・ゴンがこう切り出した。無人ヘリによる薬剤散布で圧倒的な実績を持つ日本への謙遜かと思いきや、淡々と、しかし自信にあふれた様子でこう続けた。
「(中国は)農家の高齢化が進み、都市への移住が進んでいることから、農家からも近代的なテクノロジーへの需要が増えている。これまで我が社のドローンによる総散布面積は、世界38カ国で2200万haに達している」
日本の国土面積3780万haと比較すれば、短期間でどれだけの実績を積み上げたのかがよく分かる。会場を見渡してジャスティンはこう言葉を継いだ。
「これを達成できたのはAIで操縦できるから。1人のオペレーターが1台のドローンで1日約100ha散布できる。2年前にバイエルと提携を始め、世界中で200種類以上の薬剤の散布を可能にしている」
オペレーターは操縦にコントローラーを使うわけだが、操作の多くはAIが人間の代わりに行なえる。農業用ドローンの事故で多いのは電柱や木といった障害物にぶつかることで、多くの場合、原因は操縦者のヒューマンエラーだ。AIを使った完全自動航行にすることで、ヒューマンエラーによる事故が減り、安全性が高まるという。加えて誰が作業しても、設定さえ同じにすれば、変わらぬ精度で作業できるメリットがある。
何なら薬剤の充填も自動でできる。同社のドローンの売りは「すべてのプロセスで化学薬品に触れる必要がないこと」だ。散布後、薬剤を被ったドローンに触れることのないよう、水をかけて洗浄したうえで運搬できる。それを示すため、会場の同社のブース中央で、ブランドカラーの赤いドローンにシャワーで容赦なく水が浴びせられていた。
「すべての部品がモジュール化されていて、取り外し可能。組み立ても簡単で、メンテナンスが容易にできる」

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