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スマート・テロワールの実践者たち

志産志消が息づく「当地ならでは」×「この人ならでは」



水田転作で高原ならではの6次産業化

「当社ならでは」の第二は、水田転作作物による6次産業化だ。営農地の3分の2余りは水田だが、残り10haでは、下界との気温差を活かして、さまざまな種苗の生産を行なうほか、カシス、アスパラガスなどを栽培している。中でもワラビ畑は3.5haあるという。土地の狭い山口県生まれの筆者は、思わず「ワラビが3.5ha?」と聞き返してしまった。
当地産のワラビは「西ワラビ」と呼ばれ(岩手県東部の北上山地ではなく西部の奥羽山脈産という意味だと思われる)、大きさ、柔らかさ、粘りなどが違う一級品だ。岩手県内でもそういう評価なら、首都圏では普通は口に入ることはないような品質だろう。ぜひ同社のサイトから通販で購入し、お試しいただきたい。
農園は奥羽山脈を横断する街道筋に面した場所にあるので、ワラビなどの山菜も、カシスなどの果実も、観光農園で提供しつつ、加工もして通年販売している。ジュースやジャム、水煮などのラインナップの、地元デザイナーによるパッケージデザインのお洒落さは、都会と変わらない。いや都会の普通製を大きく上回る。このあたりも女性が社長である会社ならではなのか、あるいは社長は畑に専念していて男性常務の方に販売センスがあるのか、いずれにせよ、夫婦で相補い合い助言し合って、顧客目線の商品を提供しているところが素晴らしい。

希少な国産ワラビ粉の生産を支える「志産志消」

ワラビは、何年か続けると連作障害が出る。数年おきに、張り巡らされた地下茎ごと鋤き起こして別の作物を植え替えねばならない。その地下茎には、わずか5%程度だが、でんぷんが蓄積されている。いわゆるワラビ粉であり、その粉を精製して作る日本の伝統食がワラビ餅だ。植え替えの際に出る何トンもの地下茎を活用し、純国産のワラビ粉を作れないかと高橋さんご夫妻は考えた。
ところが日本では、国産ワラビ粉の製造はほぼ途絶えていた。そもそもわずかな量しか取れないうえ、精製と熟成に3年もかかる。国産をうたう会社もあるのだが、その周囲にはワラビ畑が見当たらない。「加工が国内」という、他の作物でもよくある「国産」なのかもしれなかった。
そこで高橋夫妻は、飢饉のときにどうやってワラビ粉を精製したかを祖母の世代に聞き、機械を工夫して、自ら試行錯誤した。そして多年の苦労の末に、現在では年300kgを生産するまでになった。

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