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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

ギリシャ 産業用ヘンプと医療用大麻で経済危機を乗り越えよ!

ギリシャは、エーゲ海とイオニア海に浮かぶ数千の島々を擁するヨーロッパ南東部の国で、パルテノン神殿などの多数の世界遺産を有するヨーロッパ文明の発祥地である。人口は約1000万人、国土面積は日本の約3分の1である。夏は高温・乾燥で、冬は温暖・湿潤といった地中海性気候を利用した地中海式農業が発達している。夏場は乾燥に強いオリーブ、ブドウ、柑橘類といった果樹栽培、冬季は雨を利用した小麦栽培が盛んで、ヒツジやヤギなどの家畜飼育も行なわれている。特にオリーブの生産量は世界第3位(2019年)を誇る。
ヘンプの古代の証拠は定かではないが、古代ギリシャの歴史家として有名なヘロドトス(紀元前5世紀)の書にヘンプ繊維の一般的な利用についての記述が見られる。また、古代ギリシャのおもにローマ帝国時代(西暦40~90年)に活躍したディオスコリデスも、著書で大麻草に触れている。彼は、今日の植物園や薬草園のルーツとして知られる医師であり植物学者である。彼が著した『デ・マテリア・メディカ』の写本版には、大麻草を含む約500種類の薬草が収載されている(図1)。

EU加盟国でも遅れたヘンプ栽培の復活

オスマン帝国から1821年に独立したギリシャは、1890年にインドのハッシシ(大麻樹脂)の規制を定めたが、その当時には実質的な取り締まりは行なわれてこなかった。国内に7つの大麻繊維の加工工場があり、主にヘンプロープを製造していたという。しかし、第二次世界大戦後の冷戦時代に旧ソ連の脅威に対抗するために、トルコとギリシャの支援に力を入れた米国の影響により、1957年に大麻禁止政策を導入した。
その後ギリシャは、欧州連合の前身であるEC(欧州連合)に81年に加盟し、01年からユーロ通貨圏となった。90年代にイギリスやドイツなどのEU加盟国がヘンプとフラックス(亜麻)のEU規則に基づいたヘンプ栽培の復活を実現したことを受けて、05年からヘンプ栽培の復活に向けた活動が始まった。10年頃の経済危機の混乱を経て、13年に法律4139号で大麻の個人使用の制限が撤廃され、同時に向精神性植物のリストから産業用ヘンプが除外された。しかし、官僚仕事のためか細則が決まるのが遅く、3年後の16年に栽培品種をEU規則と同じマリファナの主成分THC濃度が0.2%未満のものに限る条件が制度化されて、最初に農家5名に栽培が許可された。17年には、農村開発省の研究機関によって18ページからなるヘンプ栽培ガイドが発行された。

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