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土門「辛」聞

穀粒判定器の正式導入が米の生産・流通を変える


3社とも最近の穀粒判定器は、ディスプレイに検査結果を表示するだけでなく、内蔵のプリンターによってプリントアウトもできる。さらにパソコンに直接送り込む機能も標準装備。「スマート・オコメ・チェーン」はその機能を利用するのだ。価格は、各メーカーの努力によって低めに抑えられている。1台58万円から85万円。

規制改革推進会議は農産物検査法廃止を提言

農産物検査の見直しの歴史は、牛歩のペースに近い。それだけ既得権益が強いということだ。昔、米検査員は旧食糧事務所の職員だった。いまでも全国に1万7000人もいる。穀粒判定器が普及すれば、彼らの職場はなくなる。そこで検査員による目視検査と機械検査を併走させることにしたのだ。
米検査規格の見直しは規制改革派が先鞭をつけた。20年1月の農業ワーキング・グループでこの問題を議題に乗せ、取り上げられることが正式に決まった。重い腰を上げぬ農水省に規制改革推進会議が投げてきたのは、米検査の根拠となる農産物検査法を廃止して、JAS法による検査という農水省がもっとも嫌がる改革案だった。
その慌てぶりは、左の表からも確認できる。規制改革推進会議の攻勢に備えて米検査規格をテーマにした検討会を次々と開いていく。農産物検査規格検討会に至っては、19年10月、5年ぶりに開いた。穀粒判別器についても、その年の5月に検討チームを立ち上げた。
規制改革推進会議がぶつけてきた改革案は本筋では正解だ。米検査の対象となるのは外観形状。この種の規格は本来、国際的な取引規格となるので国家規格であるJAS法による検査が筋。ところが農水省の怠慢で短粒種はコーデックス(国際的な食品規格)の精米規格に採用されていなかったのだ。基準そのものは日本の農産物検査法による規格の方が厳しいようだ。規制改革推進会議はそのことを知ってJAS規格の議題を持ち出してきたのか。一度、調べてみる。
工業製品にはJIS規格がある。世界に冠たるジャパン・スタンダードである。JAS規格をうたった方が、米を海外へ輸出するのに強力な追い風になるはず。こういう議論を放置しての検査見直し議論は、実に残念なことである。
さらに疑問がある。「スマート・オコメ・チェーン」では、穀粒判定器による検査結果だけではなく、食味計などで測った数値も対象になり、こちらはJAS規格を目指すというのだ。とてもチグハグな印象を受ける。真っ先にJAS規格の対象にすべきは、外観形状の検査規格であって、食味の計測値ではないはずだ。これでは米の輸出拡大は、ただの空文になりかねない。

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