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スマート・オコメ・チェーン成功のカギ
さて話を本題に戻そう。筆者が大いに期待するのは、農水省版情報伝達プラット・ホーム「スマート・オコメ・チェーン」だ。まずは農水省のPR資料を引用してみる
「穀粒判別器のデータを活用して、生産から消費に至るまでの情報を連携し、生産の高度化や販売における付加価値向上、流通最適化等による農業者の所得向上を可能とする基盤(スマートフードチェーン)をコメの分野で構築 (スマート・オコメ・チェーン)し、これを活用した民間主導でのJAS規格制定を農林水産省は支援する」
この立ち上げは、23年産から。中2年ちょっとしかない。ドラフトを読む限り、まだ手探りの状態のようである。一応、同チェーンには下記(1)~(3)などを載せるとしている。(1)食味を示す「タンパク含量等の食味に関連する情報」、(2)外観形状を示す「穀粒判別器のデータ蓄積・活用」、(3)それ以外の「スマート農業機械、乾燥調製施設、穀粒判別器等から得られる情報を簡単に取得・連携」。
同オコメ・チェーン成功のカギを握るのは、基本とシンプルさ。そして目的を明確にすることだ。唯一、期待できるのは、(1)と(2)。(3)はまったくの不要。すでに元次官の思いつきで作らせた同様の「アグミル」がある。17年の稼働だが、最近アップしたβ版(試用版)を拝見すると、サイト全体に改善の跡はみられるものの、ユーザーが少なく農業界の定番サイトになり得ていない。
ワンストップで情報提供という意気込みは分かるが、どこか大衆食堂のボリュームが売り物のてんこ盛り定食みたいな印象を受けてしまう。つまり情報に深みがないのだ。
機械検査を活用した民間の先進的な取り組み
スマート・オコメ・チェーンは米の品質規格がテーマとなる。実はマーケットにはすでに、それを部分的に先取りした事例がある。集荷も行なう農業者がオリジナルで作り、自社のホームページにアップしているものだ。
集荷激戦地の茨城県五霞町で米生産と集荷を商う有限会社シャリー(鈴木一男社長)の取り組みだ。20年11月25日付けネット版SMART AGRIに「農業法人で穀粒判別器を導入した理由~新型は政府備蓄米で利あり」の記事がある。さわりを紹介しておこう。
シャリー版オコメ・チェーンは、息子で専務の哲行さんのオリジナル。精米品質データを定期的にユーザーへ提供するためだ。現在は、検査結果をメールで送っている。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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