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新・農業経営者ルポ

全員野球を率いる経営再建のキーマン

小規模農家による露地栽培が下火になり、大型資本の参入が多い作物がパプリカだ。その一つに数えられるのが山梨県北杜市の(株)べジ・ワン北杜になる。ガスの供給を軸に電力事業なども手がける(株)サイサン(さいたま市)のグループ会社だ。光合成促進に炭酸ガスを大量に必要とし、暖房にLPガスを使えるなど、シナジー効果への期待もあって2016年に生産を開始した。が、ノウハウがまったくなかっただけに曲折もあった。20年に経営再建を託されて社長に就いたのが、竹内達(69)だ。 文・写真/山口亮子、写真提供/(株)べジ・ワン北杜

紙1枚まで経費を見直し

「販売単価をいかに上げて、コストを下げるか。極端な話、トイレの紙1枚まで見直そうと。従業員には『自分の家ならどうするかと、農場が自分の家のつもりで考えてください』と話しています」
さいたま市大宮区にあるサイサン本社の会議室で、竹内が話す。サイサンの秘書室長を経験し、オーナーの秘書を務めたとあって、紺のスーツにネクタイ、襟に社章を付けた姿はビジネスマンのお手本と言っていい。それだけに、こういう話が飛び出すとは、予想していなかった。
北杜市の農場には施設型にしては広い2・45haの敷地に、1・78haの高軒高のフェンロー型ガラス温室が並ぶ。オランダのコンサルタント会社の指導を受け、設備は主にオランダから輸入し、一部韓国の機械も導入した。
比較的冷涼な気候を利用し、パプリカの大規模経営では唯一夏季栽培をして6~1月に出荷する。パプリカは1日の平均気温が25℃を超えると栽培が厳しくなる。特に夜温の高さは避けなければならない。その点、地の利を生かして、ほかの大規模経営ができない夏季栽培ができる。他社の端境期に卸や小売店と取引が始まることもある。出荷量は300t強だ。社員は4人で、最盛期はパート40人を雇う。
特徴は、7色ものパプリカを生産すること。通常の赤、黄、橙に加え、白、紫、茶、緑も栽培する。パプリカはメインが7品種で、6品種を試験栽培中だ。顧客の要望が強く、生産を増やしている「パレルモ」は3品種扱う。茨城県美浦村にある同じグループの美浦ハイテクファームと産地リレーすることで「ベジ・ワン」のブランドで年間を通じて供給できるのも強みだ。
大手量販店やデパートと取引があり、参入後5年にしては、販路は順調に拓けているようにも思われる。年商は2億円近い。しかし、建設費にコンサルフィーなど、莫大な初期投資の回収はなかなか難しいという。目下の目標は「単年度の黒字」の達成だ。

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