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世界農業遺産を訪ねて

梅産業のイノベーションが持続的農業と生態系を保全 和歌山 みなべ・田辺の梅システム


最後に、世界農業遺産登録の影響について聞いた。松川氏「農家にとっては何の意味もない」。言下に返ってきた。「足元を固めることが重要だ。それがなければ、後継者もなくなり、やがて離農につながる」。頼もしい返事であった。経営の良し悪しこそ問題ということだ。経営力があって初めて、結果として世界遺産も存続できる。逆ではないということであろう。

5 紀州備長炭―世界遺産もうひとつの要

紀州備長炭は、温暖な地域にのみ生育する硬い材質のウバメガシの木を1000度以上の高温で焼く。白炭の最高傑作とされ、価格は高い。15kgで2万円もする。土佐の備長炭より1~3割高い。世界一高価な木炭である。衰退産業の木炭業界の中にあって、カネに糸目をつけない人、どうしても紀州でないといかんという人を顧客に、「紀州備長炭」は生き残っている。
旧南部川村で炭焼きしている、みなべ町備長炭生産者組合長の森口道夫氏(64歳)を訪ねた。道夫氏は林業2代目である。備長炭1000俵(1俵15kg)の製炭業者である。原木が採りやすい山を買えたときは1500俵焼ける。消費税を払っているのは自分だけという(つまり販売金額1000万円以上)。他は多い人で800万円、300万円くらいの人もいるようだ。
窯の前で話を聞いた。炭焼き小屋は案外きれいだった。煤で真っ黒というわけではない。横2.6m、奥3m、高2.7mの窯が二つ並び、白い煙を出していた。
今の窯の建設は20年前(平成12年)、投資額は約500万円。1回で400~450kg出炭する(仮に1俵1万円なら26万~30万円分)。2基あるので、年に40回出炭する(1基の人たちは年30回か)。森口さんは1カ月で休みは2日くらいだという。結構厳しい。
窯の脇には原料となる木(ウバメガシ)が立てられてある。窯の中には縦に隙間なくびっしり入れる(横に寝かすと土佐備長炭になる)。直径5cmの原木が焼いたとき人気商品のようだ(原木は炭になると8分の1になる)。大きな木は割って焼く。原木は切ってすぐ使う方がよい。枯らすと品質が落ちる。古木はダメ、若い木がよい。
原木は立木買い。個人の山や入会地もある。山の伐採は30年サイクルで行なわれる。最近、原木の入札はなく、誰に切らせるかは山林所有者の意向次第である。
紀州備長炭の末端価格は、小丸1万8000~2万円、半丸1万7000~1万8000円、小炭(こずみ)8000~1万円、外5000円である。一番売れているのは小炭、うなぎの蒲焼や高級料理屋で使うのは上(太)小丸。一番消費量が多いのは焼き鳥屋のようだ。備長炭は火力が強く長持ちするのが特徴(黒炭は着火しやすく高温になるが火持ちが短い)。

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