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『ブランド米開発競争』著者・熊野孝文氏に聞く

ブランド米開発の舞台裏から見えるコメ政策転換へ突破口

本誌でもおなじみの熊野孝文氏の新刊『ブランド米開発競争――美味いコメ作りの舞台裏』。40年にわたってコメを取材してきた著者の視線は鋭い。県ごとにしのぎを削るブランド米の現状レポートの行間に込められた思いを聞いた。 (聞き手/土下信人)
――コロナ下にもかかわらず、ご足労いただきました。やはり気にされますか。
いや、コメを食っていれば大丈夫だと思うことにしています。というのも、文部科学省の広報(令和3年3月号)におもしろい記事が載っていました。国立がんセンターの免疫部長だった渡邊昌さん(現メディカルライス協会理事長)と室伏スポーツ庁長官との対談です。
コメが感染症の免疫力を高める。コメの消費量が多い国ほど新型コロナの罹患率が低い。1人当たりのコメの年間消費量が200kgを超えるベトナムやミャンマーは、日本や韓国よりさらに低い。逆に小麦の消費量が多い国は罹患率が高い。そんな相関関係があるそうです。
――老人はコメ食べるなって言われてますから、そういう面では逆に免疫力なくなってるのかもしれませんね。イタリアとかブラジルはどうなんですか。ものすごくコメ食ってるけど感染者は多い。
どうなんですかね。やはり日本品種じゃないとダメなんですかね(笑)。とにかく、記事に対する反響がすごいそうです。いまあちこちコメ業者に渡邊理事長の小論文をばらまいてるんですよ。コメが余って困ってますから。
――今日の本題になりますが、『ブランド米開発競争』いい本ですね、感激しました。ぼくは中国の企業から頼まれて、日本のブランド米に関するレポートをまとめたところです。中国でもブランド米をつくりたい。そこで日本ではどうやってブランド化してきたのか。その戦略について調べてほしいという依頼でした。いろいろ集めた資料のなかで熊野さんの本がとびぬけてよかった。それで今回インタビューをお願いした次第です。
ありがとうございます。
福島県の「福、笑い」がデビューしたとき、知事のセレモニーで値段を聞いたことがあります。答えは1kg800円。魚沼コシヒカリより高い。福島に限らず、各県とも新品種をデビューさせて勝手に値段をつけて、売れなくて困ってる。
去年の4月、コロナの緊急事態宣言が出たときに、店頭から常備のコメがなくなりました。そのときイトーヨーカドーに並んだのが各県の新品種です。笑いましたね。売れなくて残っていたんです。要はまったく市場を無視してブランド米、ブランド米と言ってるわけですよ。

マーケットを無視したブランド米戦略

――消費者の支持があってこそのブランドです。生産者が決めるわけではない。
ブランド米を食べ比べても違いはわかりません。米屋さんでも食味鑑定士でも全て当たる人はひとりもいない。断言します。

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