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江刺の稲

優れた「農業経営者」は「農村経営者」になる

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第299回 2021年05月24日

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本誌創刊時に『農業経営者』という書名が良くないと言われた。発言者は農業関係者だったが、それは農業界一般の認識だった。1993年のことだから今から28年前である。
「農業経営者とは、他人の都合を考えずに自分だけ良い思いをしようとする農家のことだ」
それが彼の誌名を批判する理由だった。農業とは人々の暮らし方であって事業経営ではないというのが農業にかかわる人々の大方の認識であり、貧しい農民、農家、農村に指導啓蒙するのが農業関係者の責務であり、農業雑誌が果たすべき役割だと人々は思っていたのかもしれない。
93年とは平成5年である。細川護熙内閣によってその年の暮れにウルグアイラウンドの農業合意がなされる年であり、コメ農家の中でも自ら都市の顧客を見つけて通信販売でコメ販売をする人々も少なからずいた。また、大冷害で緊急のタイ米の輸入が行なわれた年で、その年の5月に季刊の形で創刊した本誌はコメ不足が現実化した3号目の10月発売号で一気に読者が増えた。ありがたいことではあったが、そこにはいかにもコメ不足で契約取引しているお客さんに高値で売りつけて儲かるとほくそ笑む農民の本音も見えた。儲けを目指すことは悪いことではないし、農民に限らず不届きな商売人は何時の世にも尽きることはない。しかし、そんなあざとい商売を考える読者はやがて止めていった。なぜなら本誌はそんな経営者の姿を批判していたからだ。

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