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また、ずっと後のことだが、故・松尾雅彦氏(元・カルビー社長)のスマート・テロワールの会合で「農業経営者とは経営規模の大きな農家のことだろう。この集まりに来ているのは違うんじゃない」と言ったのは農水官僚出身で今、立憲民主党の代議士をしている篠原孝氏だった。
本誌が「農業経営者」と語ってきたのは、時代や社会の変化、あるいは顧客を自覚して自らの経営を作り出す者であり、そのためにいくらかの軋轢があろうともそれを乗り越える人々のことだった。経営にはその人なりの形があり、経営規模の大小など関係ない。
隔世の感とはこのことだろう。その変化の大きな理由は何よりも農村の世代交代なのだ。かつては強い想いを持って農業に入っていった人々が村からいびり出されるようなことも少なくなかったが、いまでは非農家出身の優れた農業経営者も沢山活躍している。変わらないのは農業界や農村に利権を求める者たちだけである。誤解した企業の農業参入も相変わらず続いている。
やがて「農業経営者」という言葉も社会的認知を得た。そして、農業経営者が周りの都合も考えずに自分だけ儲けようとする者たちのことだと言い募る人々も時代に取り残されようとしている。
そもそも、事業規模がどうであれ風土に根差す産業であれば成功を望むなら地域の社会や人々を無視することなどあり得ないのである。しかも、真の発展を望むなら、農業外の取引先との連携に可能性を求める意義を考えざるを得ないのである。
先日、スマート・テロワール協会のセミナーの講師が鹿児島の(株)さかうえの坂上隆氏だった。200haを超える畑作から園芸、畜産といった農業生産部門にとどまらず、農業にかかわる多様なビジネスを展開するようになった彼こそが、今に時代の農業経営者としての一つの見本を示しているようにも思える。一度同社のホームページをご覧いただけたらと思う。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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