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山口亮子の中国のアグリテック最新事情

中国で進む衛星活用、日本に恩恵も

中国版GPSと呼ばれる衛星測位システム「北斗(Beidou)」。中国は人工衛星55機を打ち上げ、2020年夏に完成を宣言した。世界を覆う測位システムとしては、アメリカのGPS、ロシアのグロナス(GLONASS)、ヨーロッパのガリレオに次ぐ存在だ。北斗の測位情報を使い、農機を高い精度で自律走行させたり、作業情報を共有したりする試みが広がる。北斗は日本でも利用されている。

中国を沸かせた衛星網の完成

去年の夏は“熱かった”。日本の話ではない。中国の宇宙開発というか、人工衛星関連業界の話である。話題の中心となったのは、ただでさえ奥まった四川省の、四方を山と湖に囲まれたへき地にある西昌衛星発射センターだ。6月23日、センターから打ち上げたロケットが、北斗の55機目の人工衛星を、予定通りの軌道に投入した。世界を覆う衛星網が完成した瞬間を、CCTV(中央電視台)が中継した。
もともと、東アジアを中心にカバーしていたのが、「全球(グローバル)」展開を果たした。中国からみると、予定より半年早く衛星網が完成し、宇宙大国としてさらに前進したというわけだ。
北斗は、軍事用に超高性能の測位もしており、日本では軍事利用ばかり注目を集めがちだ。民事利用も進んでいて、その一分野に農業がある。中国では「農業穏 天下安(農業が穏やかなら天下が安んずる)」と、農業と国の安泰とがセットで語られることもしばしば。それだけに、時代遅れの農業を効率化し得ると、北斗を中心とする衛星活用に期待がかかる。
実は日本でも、北斗の測位システムが使われてきた。GPS単独の測位だと数mから10mの誤差が出る。そのため、数cm単位といった正確な位置把握のためにRTK方式を使う。地上に基地局を置いて補正をかけることで、2、3cmまで誤差を抑えられる。
このRTK方式は、ロシアのグロナスや北斗、ヨーロッパのガリレオまで使うことが多いようだ。というのもGPSだけだと、日本から利用可能な位置にいる衛星が少なく、測位の誤差が大きくなる時間帯が生じやすい。GPSとグロナスの組み合わせでも不十分なことがあり、北斗とガリレオまで入れれば、まず間違いなく正確な測位ができるというわけだ。

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