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【山口亮子の中国のアグリテック最新事情】
中国で進む衛星活用、日本に恩恵も
- (株)ウロ 代表取締役 山口亮子
- 第2回 2021年05月24日
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中国を沸かせた衛星網の完成
去年の夏は“熱かった”。日本の話ではない。中国の宇宙開発というか、人工衛星関連業界の話である。話題の中心となったのは、ただでさえ奥まった四川省の、四方を山と湖に囲まれたへき地にある西昌衛星発射センターだ。6月23日、センターから打ち上げたロケットが、北斗の55機目の人工衛星を、予定通りの軌道に投入した。世界を覆う衛星網が完成した瞬間を、CCTV(中央電視台)が中継した。
もともと、東アジアを中心にカバーしていたのが、「全球(グローバル)」展開を果たした。中国からみると、予定より半年早く衛星網が完成し、宇宙大国としてさらに前進したというわけだ。
北斗は、軍事用に超高性能の測位もしており、日本では軍事利用ばかり注目を集めがちだ。民事利用も進んでいて、その一分野に農業がある。中国では「農業穏 天下安(農業が穏やかなら天下が安んずる)」と、農業と国の安泰とがセットで語られることもしばしば。それだけに、時代遅れの農業を効率化し得ると、北斗を中心とする衛星活用に期待がかかる。
実は日本でも、北斗の測位システムが使われてきた。GPS単独の測位だと数mから10mの誤差が出る。そのため、数cm単位といった正確な位置把握のためにRTK方式を使う。地上に基地局を置いて補正をかけることで、2、3cmまで誤差を抑えられる。
このRTK方式は、ロシアのグロナスや北斗、ヨーロッパのガリレオまで使うことが多いようだ。というのもGPSだけだと、日本から利用可能な位置にいる衛星が少なく、測位の誤差が大きくなる時間帯が生じやすい。GPSとグロナスの組み合わせでも不十分なことがあり、北斗とガリレオまで入れれば、まず間違いなく正確な測位ができるというわけだ。
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山口亮子 ヤマグチリョウコ
(株)ウロ
代表取締役
ジャーナリスト。2010年、京都大文卒。13年、中国・北京大歴史学系大学院修了。時事通信社を経てフリーになり、農業、地域活性化、中国について執筆。⑭ウロ代表取締役。農業や地域のPRを目的としたパンフレットや広告、雑誌などの企画・制作のほか、ツアーやセミナーの運営を手がける。著書に『図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(共著)がある。
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