記事閲覧
現行の農産物検査法にもとづく農産物検査規格は、同法制定時のちょうど70年前に作成され、20年前に全面改正されたが、その間、ずっと名存実亡の検査規格だった。先に説明した通り、籾、玄米、精米が対象で、精米についての検査規格は、「七分づき精米」と「完全精米」の種類と規格があり、一般的な後者を表にしてみた。
玄米と同じように、水分、粉状及び被害粒、砕粒、異種穀粒及び異物の形状が対象で一等、二等、等外の3ランクある。これでも十分に使えそうな検査規格のはずだが、なぜか農水省は名存実亡状態にしていた。新たな精米JAS規格が取り入れられたら、現行検査規格がどういう扱いになるかについて、米麦流通加工対策室からの説明は一切ない。
農水省は、農産物検査規格の見直しに向け2020年9月から「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」を8回も開催してきた。メンバーは13人。精米についての農産物規格規定の認知度を顔見知りの3人に質問してみたら、知っていると答えたのは1人だった。全員に聞けば、認知度の低さはもっと下がるだろう。
認知度の低さをよいことに、米麦流通加工対策室は、検討会メンバーを相手にやりたい放題。そう決めつけたのは、2月25日の第6回検討会で配布した「スマートフードチェーンとこれを活用したJAS規格の制定について(案)」(JAS規格制定案)と題した文書。問題の箇所は、この記述部分だ。
「JAS規格は、(ア)低価格大ロット輸出向け、(イ)高品質輸出向け等、規格のニーズが複数想定されることから、これを念頭に検討を進める」
これは虚偽情報だ。それも相当に悪質だ。検討会メンバーを愚弄している。この段階で、輸出向け精米規格など検討されていた事実はない。検討していたのは、国内流通向け精米のJAS規格化だ。精米JAS規格案のことを執拗に質問していたら、上原室長は切れてしまったのか、検討作業を進めている日本精米工業会(精米工)に取材してくれと逃げてしまった。
日本精米工業会は、旧食管制度時代からある組織だ。全国食糧事業協同組合(全糧連)がルーツ。系統、商人系を問わず精米機を設置した組織や業者や精米関連機器メーカーなどが会員。現在、賛助会員を含めて313組織・業者が加盟。主立った会員は米卸だが、なぜか大手の神明(神戸市)やヤマタネ(東京都)は数年前に脱退したままだ。
認証ビジネスで濡れ手で粟の精米工
会員の方はここからログイン

土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
ランキング
WHAT'S NEW
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
